出版社内容情報
不適切な養育が子どもの脳を“物理的”に傷つけ、学習意欲の低下や非行、心の病を引き起こす。脳研究に取り組む小児精神科医が、子どもの脳を科学的見地からひも解き、親子の愛着の大切さを説く。
内容説明
マルトリートメント(不適切な養育)が子どもの脳を“物理的”に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。
目次
序章 健全な発達を阻害する脳の傷つき
第1章 日常のなかにも存在する不適切な養育
第2章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響
第3章 子どもの脳がもつ回復力を信じて
第4章 健やかな発育に必要な愛着形成
終章 マルトリートメントからの脱却
著者等紹介
友田明美[トモダアケミ]
1987年、熊本大学医学部医学研究科修了。医学博士。同大学大学院小児発達学分野准教授を経て、2011年6月より福井大学子どものこころの発達研究センター教授。同大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長兼任。2009~2011年、および2017年4月より日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表者を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
131
著者は福井大学子どものこころの発達研究センター教授で、日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表の友田明美先生。言葉による脅し、威嚇、罵倒、無視、育児放棄、子供の前での夫婦げんかなどの子供への不適切な関わり方を「マルトリートメント」 と呼びます。多かれ少なかれ不適切な親の行動はあって、まずは自身の行為が誤りであったことを認め行動を改めることから。マルトリートメントが続くと子供のこころに深い傷が残り健全な発達を妨げます。子供たちの「安全基地」になれるよう頑張ります。2022/01/07
mariya926
110
虐待という言葉の響きが強烈なので、虐待と呼ばずにマルトリートメントと読んでいるのは初めて知りました。マルトリートメント(不適切な養育)で脳まで傷つけてしまいますが、ダメージを受けた脳の写真もあるので分かりやすいです。そして親から無視され放っておかれる愛着障害。愛着が形成されていない状態が子どもにひどい傷を与えるか知りました。最近イヤイヤ期をむかえて「~やめて」「~ダメ」「~しないで」という否定、禁止語を使ってしまっているので気をつけたいと思います。夫婦喧嘩は子どもの前ではしてはいけないのもよく分かりました2018/08/24
ちゃちゃ
108
私たちは出産を機に、突然「親」になる。けれど、待望の我が子を胸に抱いても、様々な要因やストレスからうまく愛せないことがある。児童虐待の不幸な事件は今も後を絶たない。ではどうすべきなのか。著者は脳研究に取り組む小児科医で、マルトリートメント(不適切な養育)がいかに子どもの脳に深刻な影響を及ぼすかを訴える。特に幼い頃から虐待を長期にわたって受け続けると脳に萎縮や損傷がみられるという。声なき声を発して救いを求める子どもたちのために、養育者や支援者も含めて子どもの健やかな発達を支援する一助とするための良書だ。2018/08/13
はる
85
明らかな虐待ではなく、親からの心無い言葉や繰り返される叱責が子どもの脳を傷つけることを知った。日常生活に問題のない学生さんでも、繰り返しの叱責や怒鳴られることが多い場合は脳が収縮していたり、そこここにあり得る話だと思った。自分も子どもへの接し方、特に自分の感情が前面に出る時は意識して気をつけなくては。2017/12/13
とろこ
82
「虐待」と聞くと、人は、事件性のある事柄を思い浮かべる。しかし、事件に発展しなくとも、子どもを傷つけていることがある。それが、「マルトリートメント=不適切な養育」。主に幼少期に、養育者が、望ましいとは言い難い関わりを持ったことで、子どもの脳が変形しているということが明らかになった。その結果、その子は、自傷行為をするようになったり、非行に走ったり、学習意欲が低下したりする。また、成人してから、鬱病や統合失調症を発症することもある。養育者や、これから親になろうとしている人々には是非読んでほしい良書。2018/10/09