内容説明
古今東西の名著、その核心を読み解く。男と女。そこに光と闇がある。美しくも危険な物語の全貌―書き下ろし特別章「歌で読み解く源氏物語」収載!
目次
想いは届けられるか
第1章 光源氏のコンプレックス
第2章 あきらめる女、あきらめない女
第3章 体面に縛られる男たち
第4章 夢を見られない若者たち
ブックス特別章 歌で読み解く源氏物語
読書案内
著者等紹介
三田村雅子[ミタムラマサコ]
1948年東京生まれ。国文学者。フェリス女学院大学名誉教授。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院博士後期課程修了。フェリス女学院大学教授、上智大学教授を歴任。専攻は『源氏物語』『枕草子』、日記文学、中世物語など。NHK教育テレビ「古典への招待」の講師を長く務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
111
源氏物語は、常にとても遠いところにあって、マンガならと「あさきゆめみし」を一揃い購入するも、1巻すら読めずにブックオフに持っていった苦い思い出なある。角田さんの現代語訳も1巻でギブアップ。今の大河に合わせて今度こそという決意から(日本人としての教養として)まず入門書として本書を手に取る。ふむ、なるほど。光源氏が「天皇になれなかった皇子」として不遇感から持つ上昇志向という観点を得た。そして天皇にかかわる禁忌の女性に特にかかずらってしまうと。そして、ミドルライフクライシス。手がかりとしたい。2024/02/08
アキ
71
源氏物語など日記文学が専攻の国文学者。「宇治十帖」「浮舟」が最も好きだというのは賛同します。母娘関係を図にすると「二重らせん構造」になるというのは、まさかDNAの構造まで見抜いていたというのでしょうか?他書からの引用ですが、光源氏の女官たちを「4番バッターばかり集めた巨人軍のようだ」とは言い得て妙。源氏物語でもののけのせいだと考えているのは光源氏一人で、紫式部は冷静に見ていて疑っていたのではないかとは著者の考え。源氏物語の人物や男女の関係について色々な捉え方を示してくれる。次は、大塚ひかり訳に挑戦します。2020/01/23
ころこ
27
『古事記』が伝統から切断されているのと対照的に、我々の物語に近すぎる『源氏物語』の優れた点が今一つよく分からないと思っていました。しかし、本書を読む前の固定観念は一掃されました。当時における姻戚関係は政治的な意味が大きく、男女関係におけるパフォーマンスが当時の政治そのものといえます。仮名を使った歌は情愛を伝えることと、政治的なコミュニケーションのツールの両義性を帯びます。しかし、男女の関係に実質が生まれると、政治的優位を捨ててでも情愛を貫こうとする場面も出てきます。両者が錯綜するため全能者は登場しません。2018/10/23
たらちゃん
19
源氏物語がぐんっと身近に感じられ、読みたいと思わせる内容。光源氏のコンプレックスとか責任転嫁とか人間臭い話なんですね。高校生の時にこうした導入があって取り組めば苦手意識を持たずに済んだかも。100分で名著に興味が湧き、維摩経とシンデレラの巻も買いました。2018/05/16
どりーむとら 本を読むことでよりよく生きたい
18
源氏物語を女性の登場人物の心理を中心に読んでみた。入水自殺を図った浮船が、書くことによって心の安定を図ったという言葉画強く印章に残った。NHKの大河ドラマ「光る君へ」でまひろが,「蜻蛉日記」の母である道綱の母から、私は側室であることの心の安定を書くことによって図ってきたという言葉を貰った場面ともだぶつてきた。その他の女性の登場人物も味がある。それぞれの人物について掘り下げて読んでみたいと感じた。2024/04/21