内容説明
「絵画とは“世界”である」(ゴッホ)という。絵画的世界というものは何か。光と影と彩り、“こころ”と“かたち”、キャンパスに描かれたさまざまなミクロコスモス「小宇宙」を旅しながら、画家が人間として描いた絵画というドラマを味読する。
目次
1 絵画の「原風景」
2 身体は語る―絵画の視線・技法の手
3 群集の景色―視界を超えて
4 記憶の断章
5 故郷の自然誌―セザンヌとともに
6 大気と光―風景のかなたへ
7 連環するイマージュ―モネの楽園
終 「見ること」のドラマ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
袖崎いたる
10
社会学者による絵画についての評論というかエッセイというかそんな感じ。〝なのだ〟や〝である〟などの強い文体で述べられるのは著者の絵画体験の紹介であり、強くはあるが硬さはそれほどではなく、学術的な演出も弱め。たくさんの名画鑑賞に裏付けられた感動もしくは震撼の熟読玩味からの表現は含蓄ある。どのような言葉、そしてその使い方が絵画の印象を語るのに用いられているのかという観点からも面白い。たとえば「あるモチーフに憑かれること」であったり「匂い立つエピソード」であったり「その絵が包みこまれている霧のようなもの」等々。2017/04/19
swshght
6
《ラスコーの壁画》を嚆矢とする絵画史が人類にもたらしたものとは何なのか。それが本書を貫く大きなテーマだ。だから、この論考は絵画分析を第一の目的としない。また画家のスタイルや技法の解明に迫ることもない。著者は絵画作品が見る者に問いかける「見ること」の本質を探求する。その点ではジョン・バージャー的なアプローチに近い。絵画は社会や生活に深く根差しており、我々はそのなかで絶えず獲得される「視点」によって世界の認識を可能とする。絵画は”ここから彼方へ”と開かれた窓に他ならず、より広大なパノラマへと見る者を誘う。2012/08/19
バカハツ五郎
1
勉強になった。美術館へ行こう。2010/05/29
ずほ
0
「絵画をみる」系の本で一番面白かった。画家たちは、何を、どう見て、そこにある何かを、どう表現したのか。作品にはその試みが残されている。欠点としては挿絵が汚いことと、紹介されている絵に載ってないものがあること。紹介されている絵画をまとめてみたので読む際に使ってみてください。http://wywts.hateblo.jp/entry/2015/03/04/0456292015/03/07