出版社内容情報
文学の発生を共同体の根底から洗いだす意欲的な試み.未明の彼方へと謡いだされた神謡,この装いの中から和歌の共同性が確保されてゆく様を,古代の歌の〈読み〉を通して明らかにする.I 歌の呪性,II 歌の叙事,III 歌の表現の論理,IV 歌の転換
目次
1 歌の呪性(常世波寄せる荒磯;ススコリの呪文歌;歌の呪性と語りの呪性;〈聞く〉ことの呪性)
2 歌の叙事(生産叙事;巡行叙事;歌の叙事)
3 歌の表現の論理(様式の論理;妹の神話的位相;恋歌の位相;行路死人歌の構造;序詞の成立)
4 歌の転換(柿本人麻呂論―宮廷歌人の成立;山部赤人論―〈聞く〉ことの始源へ;大伴家持論―叙事の再編へ;古今集の文学史―ことばの始源から)
感想・レビュー
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袖崎いたる
2
吉本隆明のような「共同性」、「個体性」、「幻想」などの言葉遣い。神謡から和歌へ、村落から宮廷へ、万葉集から古今集へ。文学のもつ呪性と様式とをめぐり、さまざまなトピックを説き聞かせてくれる。重要なキーとなっているのが「装う」という概念。これにより、平安時代の貴族たちが「神らしくあらねばならなかった」といった消息を指させるようになっている。柿本人麻呂が宮廷歌人の始祖の位置にあるというのも面白い。始祖たる彼が敷いた道こそ、平安貴族の神らしさを支える偉大なる先蹤だった。その道にはしかし彼の作家性は混じっていない。2025/04/01