出版社内容情報
第一次大戦後から第二次大戦期の日本の労使関係を産業民主主義の前提期として再構成し,その中心概念となる人格主義の普遍性とともに,同質化の論理,国家依存志向など日本固有の要素を明らかにする.戦後の労使関係の歴史的位置を考えるうえでも有益.
目次
第1部 戦間期分析―三井三池鉱山・呉海軍工廠の事例を中心に(三井三池鉱山の事例;呉海軍工廠の事例)
第2部 戦時期分析―産報政策の展開を中心に(産報政策前の国家介入;産業報国連盟方式の形成と解体;勤労新体制と大日本産業報国会;再編産報定着への模索;産報無用論との相剋)
結論 現代日本労使関係把握への含意
感想・レビュー
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Mealla0v0
4
「勤労」のイデオロギーを検討する本書は、それが総力戦の構築においてどのように作用したのかを追及する。大正期には、WWIで増加した雇用労働者をどのように位置づけるのかが問題になり、労働争議も増加していた。労働者を革命勢力から分離させ、総力戦国家へと統合するために登場したのが「勤労」イデオロギーであった。労働者から勤労者へ。こうした流れは、労働力の再編という課題と密接に結びついており、個別企業を国益へと結びつけるような操作と連携していた。個別企業ないしはその共済組合の労働者から、産業報国精神を持った勤労者へ。2021/04/19