出版社内容情報
儀礼という「演劇装置」が徳川支配を正統化した.儒学が体制教学であった中国・朝鮮との近似と相違を探りながら,近世から近代へと転回する政治体制の思想を剔抉する.「幕府」「天皇」など従来の日本史用語の思想性も衝き,斬新なパースペクティブを提示.
内容説明
「御威光」を演出する知。儒学が体制教学であった中国・朝鮮との近似と相違を探りながら、近世から近代へと転回する政治体制の思想を剔抉する。
目次
序 いくつかの日本史用語について
1 「御威光」と象徴―徳川政治体制の一側面
2 制度・体制・政治思想
3 儒学史の異同の一解釈―「朱子学」以降の中国と日本
4 儒者・読書人・両班―儒学的「教養人」の存在形態
5 東アジアにおける儒学関連事項対照表―十九世紀前半
6 「泰平」と「皇国」
7 「理」の美的嫌悪と暴力:8 西洋の「近代」と儒学
9 「進歩」と「中華」―日本の場合
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
owlsoul
10
江戸時代、永き泰平の世で発達した政治権力による身分格式の可視化。その技法によって人々は圧倒的階級格差を刷り込まれ、当時の権力者は崇高なまでの「御威光」に包まれていた。暴力により戦国を勝ち抜いた強者による支配。そこに理論的正当性はない。故にその政治実践は自らの「権力の可視化」に終始する。全国を巡る参勤交代の格式競争は、大名自身の権力を誇示すると同時に、その上に君臨する将軍の「御威光」を世に広める役割も果たした。しかし、過度な抽象化により裏づけを失った「御威光」の魔力は、外国勢力の登場によって脆くも崩れ去る。2023/10/30
Toska
8
儒教的世界観による統治システムと知識人層に支えられた中国(・朝鮮)に対し、そういうものを持たず、統一戦争を勝ち抜いた武家政権が「御威光」ベースの支配体制を構築していた日本。多くの政治的・文化的要素を共有する東アジア世界でも、仔細に見るならその内実には大きな違いがあり、これが近代以降の不幸な行き違いにつながっていくのだろう。とりわけ、「皇国」意識の台頭と中国への蔑視との関係を論じた第6章は重い。2023/03/07
Ucchy
2
非常に面白い。斬新な指摘あり。知的好奇心を喚起される。面白かったところ。歴史用語(「幕府」「朝廷」「天皇」「藩」)の検討。徳川政権の「御威光」による支配。中・韓・日における儒学の系譜。日本の儒学の多様性。泰平による徂徠学の挫折と「皇国」意識の浮上。西洋は儒学の理想に合致。蘭学による中華の相対化。儒学的理想の実現としての文明開化。2014/09/04
yagian
0
新鮮な指摘があって興味深かった。2010/07/16