出版社内容情報
歴史学はいかなる知的枠組み(フレームワーク)のもと形づくられてきたのか.その時代の状況にも対応し,切りひらかれてきた歴史学は,その枠組みがときには批判されつつも,継承されてきたことを史学史的に論じる.これからの歴史学にとって必要な手がかりを示す.
目次
序章 「事実をして語らしめる」べからず―職業としての歴史学
第1章 戦後日本の経済史学―戦後歴史学からグローバル・ヒストリーまで
第2章 「転回」以降の歴史学―新実証主義と実践性の復権
第3章 「封建」とは何か?―山田盛太郎がみた中国
第4章 経済史学と憲法学―協働・忘却・想起
第5章 歴史学研究における「フレームワーク」―インド史研究の地平から
第6章 「小さな歴史」としてのグローバル・ヒストリー―一九五〇年代の新潟から冷戦を考える
第7章 読者に届かない歴史―実証主義史学の陥穽と歴史の哲学的基礎
著者等紹介
恒木健太郎[ツネキケンタロウ]
1979年生。2010年、京都大学大学院人間・環境学研究科で博士学位を取得。現在、専修大学経済学部准教授
左近幸村[サコンユキムラ]
1979年生。2012年、北海道大学大学院文学研究科で博士学位を取得。現在、新潟大学経済科学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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飛燕
2
シンポジウム+αの寄稿から成る論集で、経済方面の史学史的な論稿が多かった。長谷川貴彦氏の文章は欧米圏を中心とした近年の歴史学の動向をわかりやすくまとめてくれており、とくに参考になった。ただ、副題でもあり、論集全体のテーマに掲げられている「フレームワーク」という語は寄稿者によって語用がまちまちの印象を受けた。というより、そもそもこの語に明確な定義がされていないように思う。でもテーマに設定されているから各寄稿者がむりやり使っている、という感じ。2021/12/09
check mate
1
経済史学における「フレームワーク」の意義と機能について。高橋幸八郎のフランス革命論が憲法学に与えた影響など。2020/11/06
ぽん
0
編著ゆえか、「フレームワーク」の捉え方が論者によってバラバラ。「パラダイム」とどう違うのか、普通の学史とどう違うのか。フレームワークそのものへの論及があまりない気がする。学説上の論争やパラダイムの転換が実は同じフレーム内の議論に過ぎなかった、みたいのを期待してたのに。/第6章は「成功」にもかかわらずフレームワークから抜け落ちてしまった歴史を扱っており、興味をそそる。しかしなぜこれをグローバルヒストリーとして論ずる?/一番面白かったのは小野塚先生の第7章。「読者」という観点でフレームワークを問い直している。2021/01/10