出版社内容情報
中世における戦闘の実態,「武」という技術のありようの再構成をふまえ,武士という芸能人が成立する過程をとらえなおし,東国武士をその典型としてきた従来の武士像に修正を迫る.さらに,通説的な武士像と貴族像がいかに創出されたか,史学史的な観点からの検討を加える,意欲的な論集
目次
序章 二つの武士観―原勝郎と久米邦武
第1部 武士の成立(武士を見なおす;古代の武と文;近衛府と武官系武士;武官系武士から軍事貴族へ;中世成立期における国家・社会と武力;付論 武士発生論と武の性格・機能をめぐって―諸氏の批判に応える)
第2部 武芸と戦闘(遊興の武・辟邪の武;鶴岡八幡宮流鏑馬行事の成立―頼朝による騎射芸奨励の意味;日本中世の戦闘―野戦の騎乗者を中心に;古代・中世の武器武具と馬具)
終章 常識的貴族像・武士像の創出過程―中世後期から明示国家期まで
感想・レビュー
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アトラス書房
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武士の成立を段階的にみると、まず院政期は、中央軍事貴族が王権や摂関家の手足として使役される段階である。地方では兵の家から二次的に武士の家が成立し、これに在地領主の一部が新規参入した。武家の棟梁は、いまだ自身の所領獲得に汲々としており、地方への主従制の拡大はない。平氏政権は、唯一の軍事権門となり国家の常備軍の頂点に立つ。内乱が起こると、平家も反乱軍も器量に堪える広範な階層を動員したため、武士とみなされる階層が広がり、やがて鎌倉幕府の御家人制により、武士≒在地領主という対応関係が成立した。(野口実が批判)2023/10/21