出版社内容情報
日本の伝統芸道における「わざ」の伝承過程は,西欧における技能の教授法とは極端に異なる.著者はこの「わざ」の神秘に分析哲学のメスを入れ,根底に流れる「わかる」ということの本質を浮彫りにし,西欧の認識論との共通点と対比点を明確にする.補稿:佐伯胖
内容説明
「わざ」をきわめることは「世界」を知り、拓くこと。―伝統芸道の伝承における認知過程を解明。
目次
序章 型なし文化のなかで
1章 「わざ」の習得
2章 「形」より入りて、「形」をより出る
3章 「間」をとる
4章 「わざ」世界への潜入
5章 「わざ」言語の役割
6章 「わざ」から見た知識
7章 結び―学校、生活、知識
補稿 なぜ、いま「わざ」か(佐伯胖)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tyfk
7
『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか』と重なる領域でもあり、こちらで深堀。図4.1「わざ」言語の認知プロセスの構造が簡明。「わざ」言語、なぜ直接具体的に説明せず、あえて比喩を使うのか、なるほどそういうプロセスになるからか、というのがわかる。この本の「間」の捉え方は独特だけど、いろいろ関係性が重要なのねと。2025/04/04
GORO
1
「間」や「呼吸」などその世界に属していない人にとっては暗号のような言葉を丁寧に見つめなおしている点が素晴らしい。2010/03/22
mRNA
0
伝統芸能の世界の「わざ」伝達に、なにか現代日本の学校教育に足りないものが見出せるのではないか?という問題意識をベースに、「わざ」獲得の認知過程に伝統芸能の特殊さに留まらない一般性があることを論じていく。西洋的な体系化された知、とはちょっと枠組みの違う知識観の提示を目指しているのが「認知科学選書」たる所以なのだろう。混沌とした学際領域・認知科学の一端を垣間見。表紙絵は意味ありげ(好き)。2018/12/19