出版社内容情報
《内容》 ゲーテの病跡学的解釈などをふまえ、人間の性格がいかに異常と正常の間をさまよっているか、文明社会の問題点をつく。2000年に復刊。
内容説明
精神科医療が一見急速に、かつ激烈に他の医療の分野に比べて矛盾を露呈して世論の注目を浴びるようになったのにはさまざまな原因があるが、その原因の一つは、精神科医療の対象である精神障害が、その特徴として社会的性質を強くおびているということであろう。歴史において精神障害はこの特徴の故に、社会から疎外される運命をもったし、人間の自由を謳う現代社会もまたその例外ではない。非人間的な現代の「精神病棟」はその象徴であろう。現代社会の仕組みの中で精神障害者の病気からの解放を実現する道はまことに険しい。それは精神障害者を解放するための科学である精神医学がまだ発展の途上にある若い学問であることの他に、精神障害者のための処遇がわが国では著しく遅れており、その前進をはばむ壁が厚く固いためである。本書に書かれたことはこのようなわが国の精神科医療の現状を理解する上でいまでもその役割をはたすことができるだろう。
目次
1 妄想と狂信
2 環境と精神病
3 天才と狂気
4 精神医学の進歩と課題
5 社会と精神医学
感想・レビュー
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gtn
19
1966年発刊の原版を読む。戦中戦後、双葉山や呉清源を信徒として獲得し、注目された璽宇の教祖「璽光尊」という女性の精神分析を試みる。結論は、妄想性精神疾患。結婚後、高熱により仮死状態になり、小康を得た頃から、予言めいたことを口走るようになる。元々国粋主義者だった彼女は、その「お告げ」も国体護持を根幹としていたが、戦後、天皇が人間宣言すると、都合よく、自分こそ現人神と名乗ってしまう。「妄想は現実によってけっして否定されない」と著者。夢のようなものか。夢はどんなに非現実なことが起きても納得し、新展開を続ける。2023/01/08