出版社内容情報
僕がアーヴィングの作品から学んだのは、小説が総体として持つべきパワーのようなものだ--訳者が惚れ込んだ圧倒的な青春小説。
内容説明
アーヴィングはその作品を通して僕をつよく励ましてくれた―現代小説の世界を大きく膨らませる「圧倒的な物語」を持ち込み、同時代作家として訳者を夢中にさせたアメリカ文学界の暴れん坊。その出現を告げる長篇小説。ライブラリー版にはアーヴィングのエッセイを新収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
46
ジギーの父・ヴラトノのパートとジギーが動物園を下見するパートが交互に進行する。この第2部が本作の中心のようだ。ヴラトノの話には絶望しかない。もうひとり、ヴットがこのパートの主要人物だが、この状況を生き延びることなんてできるのだろうか。ヴラトノとヴット、ジギーとグラフ、ともにオートバイに乗ってグラフだけが生き残る。世界の複雑さを表現するために村上春樹は交互に進行する手法を使うが、少なくともここから影響を受けている。2025/12/31
ドン•マルロー
27
荒っぽく全体として粗野な印象は否めないものの、得体の知れぬ力を湛えた作品であることは間違いない。その感覚をロック・ミュージックにでも例えようとするならばそれはいかにも陳腐な比喩となってしまうだろうが、カウンターカルチャー全盛の時代だっただけに、あながちまったくの見当はずれというわけでもなさそうだ。精読ではなく、体感するということが何よりも重要なのかもしれない。理性や論理的思考からかけ離れた、根源的な感情に身を任せることの痛快さないしは開放感。そしてそこに励ましのようなものを見出すことも確かに可能だろう。2016/04/21
nobi
27
60年代ウィーン。バイクから娘たちに花を投げながら最初に訪れるシェーンブルン宮殿内の動物園。「廃墟を継承している」かのような物憂い動物たちが若者二人の目を通してありありと描かれる。無鉄砲と優しさ。アーヴィングだ!ただ優しさの貫徹には、第2次大戦中の東欧においては、いずれの友人を犠牲にするのか、の選択を迫られた。「熊を放つ」無謀な行為も、友の遺志を継ごうとする想いを前にすると拍手したくなる。それに当時の勢力抗争に翻弄されるユーゴとウィーンを肌に感じる凄さ。大戦の災厄への鎮魂、傲慢な人間への怒りの書とも映る。2015/08/01
春ドーナツ
18
第二章を読み進める内に、これはシンプルな青春小説ではなかったのだと思い知らされる。大滝詠一の「君は天然色」ではないのだ。好きな曲だけど。それとは別に望月峯太郎の「バイクメ~ン」がブルンと脳裏を走り抜けていった。読書行為には福袋のようにトリッキーでいろいろな連想が詰め込まれている。パソコン画面の書影では気づかなかったし、上巻を手にしている時も気づかなったけれど、風景写真の上に大熊座のイラストが重ねられていた。いとをかし。第三章の展開は呆気なくて強烈だった。猪突猛進はファンタジーであり、二律背反は現実である。2019/11/04
ぐうぐう
14
あまりにも風変わりで、だからこそ、自由がこの小説にはある。自由であろうとする意思が、物語を息衝かせている。それが、訳者である村上春樹の言う「小説の力」なのだろう。『ガープの世界』と比べると、デビュー作ゆえの拙さもあり、ぎこちなさもある。だけれども、それすら好感に変える、不思議な愛嬌があるのも事実だ。何よりも、「生きた小説」だけが放つことのできる輝きに満ちている。 2010/09/03




