出版社内容情報
「都合ついたら、明日からでも出て来てくれないか」。
林達夫に呼ばれて行ってみれば、待っていたのは『細雪』だった――
岩波書店から中央公論社を渡り歩き、赤ペンを握ること三十有余年。
練達の校正者が、誤植列伝から普遍的な校正の心構えまで、ユーモアたっぷりに綴る。
文庫版ではコラムと新・校正練習問題を増補。〈解説〉牟田都子
【目次】
内容説明
「都合ついたら、明日からでも出て来てくれないか」。林達夫に呼ばれて行った先にあったのは『細雪』の校正刷りだった―岩波書店と中央公論社で校正者として赤ペンを握ること三十有余年。伝説の校閲部部長が、誤植列伝から普遍的な校正の心構えまで、ユーモアたっぷりに綴る。新たなコラム三篇と新・校正練習問題を付す。
目次
校正歴三十余年
校正とその周辺(誤植の恐ろしさ;校正とは何か;無誤植ということ ほか)
校正十話(落丁・乱丁・誤植;〈常識的〉校正をめぐって;〓外、校正子を叱る ほか)
校正の技術(難字難語はまだ生きている;国語の生態;活版印刷とは? ほか)
著者等紹介
長谷川鑛平[ハセガワコウヘイ]
1908年名古屋市生まれ。法政大学文学部哲学科卒。在学中の31年にはじめて岩波書店で校正に携わる。46年、中央公論社へ。谷崎潤一郎『細雪』の校正に携わる。中央公論社校閲部部長在職中から、法政大学講師を兼務(倫理学)。本州大学(のち長野大学)教授。1995年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
38
古書の中公新書版を読んだのは、もう10年以上前のこと。インボリュート関数表の校正の話は覚えていたものの、本書の著者だったことは忘れていた。この分野には間違いを笑えるユーモラスな本もあるが、医薬品の数字のように一字間違えば人命にかかわる場合もありうるという、厳しさも教えてくれる。初版本から60年、著者没後とはいえ「増補新版」として初文庫化。解説があの牟田さんという絶妙な、しかし必然ともいえる人選であるのも、見てすぐ購入した理由。活字の組み方のコツなど今では無用に思えるが、確かに読みやすさはちがうと思う。2025/10/01
阿部義彦
16
出たばかり9月中公文庫新刊。私の大好きな東京堂神保町店ではすでに文庫部門の第3位にランクイン(本の雑誌社調べ)してます。本好きの私としては最近校正が来てると言いたい。牟田都子の「本にあたる」亜紀書房から新潮社の校正漫画「比べてけみして」等など。解説も牟田さんが書いてます。著者は谷崎潤一郎の『細雪』の校正にも関わって中央公論の校閲部長でも有りました。自分的には活字の句読点の二分活字(半角)の処理や調整、行末に来た時はぶら下がりと言って特別にはみ出して句読を打つ、等の禁則処理が興味深かった。この世界深すぎる。2025/09/27
0sanada0
2
読んでみたかった本なので復刊ありがたい。前半は校正の細かい点、しかし当事者にとっては悩みのタネである「二重心理」や赤ペンの加減を心情とともに綴っていて、それが特に面白かった。1ページに3カ所も付箋貼ったのは初めて。後半は知識・技術的な内容。全体的に、著者に要求を突きつけたり「ばか正直に原稿といちいち引き合わせるのも億劫千万」などと本音が見えたりするところが人柄が出てて良かった。校正者は「常に常識の地平を、ぼさぼさ歩きまわっている歩行者にすぎない」。2025/09/29
くろう
0
興味はあるけど正しくは知らない校正者のお仕事。伝説の校閲部部長がユーモアたっぷりに分かりやすく面白く綴った本の復刻版。いやー、面白い。国語の話だけでなく、印刷についても語られたりしていて目から鱗。漢字とかなの使い方の変化の時代、誤字脱字、校正記号、難読漢字試験、そっくりさんに数字の表記。こうして見ると国語って面白いんだな、と改めて。「少しでもよいものを」。本を読んでいる身としては、本を作り上げてくれる全ての人に感謝をしたい。これは何度でも読み返したくなる一冊。2025/10/09
mayumi
0
(20250927)2025/10/09