出版社内容情報
出奔した父、母と移り住んだ街、祖母や伯母たちが営む洋裁店で縫いあげられるドレス……。幼年時代の切れ切れの記憶の合間にあらたに浮かび上がる別の記憶が重なり合い、コラージュされて織りなされる繊細で甘美な物語。巻末にロングインタビュー、金井久美子のエッセイを付す。
内容説明
日常の続きのように家を出て行った父、母と移り住んだ町、伯母の洋裁店で縫い上げられるドレス…。祖母や伯母、そして母の記憶と私の幼年期の思い出が複数の糸となって、重なりあい織りなされる甘美な物語。巻末にロングインタビューと、金井久美子のエッセイを増補する。
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年、群馬県高崎市生まれ。67年、「愛の生活」でデビュー、現代詩手帖賞受賞。79年、『プラトン的恋愛』で泉鏡花文学賞、88年、『タマや』で女流文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rinakko
8
再読。素晴らしかった。遠い日々の記憶が弛んで寄り集まり、褪色したモザイク模様になる。過去に凝る茫洋とした時間の淵から掬い上げられる、鮮やかなイメージと繰り返すその語り直しに、ふと眩暈する読み心地だった。とりわけ、何度も出てくる “まゆみの生垣” をめぐらし曲がりくねった狭い道の描写は、時間を行き来してとめどない語り口そのものとも重なる。“それとも、いつかこの今の瞬間、今こうして見ている月と、この道と、風と、こうして今わたしの感じているすべての感覚を思い出すことがあるだろうか。”2024/05/14
chacha子
3
長いセンテンスが印象的だった。私小説なのかなと思ったけれどそうではなく、描写の綿密さに舌を巻いた。2024/09/29
モジモジアニキ
0
好きな映画のシーンをゆっくりコマ送りし続ける幻覚に囚われる。ヒッチコック「めまい」にて主題のテーマはミステリーなのだけれどかつての思い人そっくりの装いを披露するキムノヴァクを見つめるときのあの甘美な罪悪感を思い出す。2025/03/09
フッセル
0
2024年5月の読書会課題。初めて金井美恵子さんの作品に触れる。縫い上げられるドレス、パッチワーク、繋がり連関していく記憶。形容に形容を重ねて、細かく細やかに細部を描写していく、世界をすべて忘れえぬものにするために。入り込めなかった世界に、いつしか心地よいお湯のような温かさを覚える、揺蕩う時間、読んでいるのか眠っているのか現実との境界線が曖昧になっていく。知識や教養というものは知らなければ記号にしか過ぎないということも教えてくれた。すべてを知っておくことはできない。ただお湯に浸かっていてもいいと思った。2024/05/04
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