出版社内容情報
「富士日記」はどのように読まれてきたか。そしていま、どのように読み返すか。小川洋子、平松洋子、苅部直、村松友視による書き下ろしエッセイと多数の写真でその魅力を余すところなく紹介する。新版に対応する登場人物索引を付す。
内容説明
『富士日記』はどのように読まれてきたか。小川洋子、苅部直、平松洋子、村松友視による書き下ろしエッセイと、各紙誌に掲載された書評を通して、その魅力を浮彫りにする。武田百合子、泰淳氏による関連作品、新版に対応する人物索引を付す。写真多数収録。
目次
第1章 その後の『富士日記』(今年の夏;二年目の夏 ほか)
第2章 『富士日記』に寄せて(宇宙のはじまりの渦を覗く;生と死を見つめる眼 ほか)
第3章 『富士日記』を読む(解説・帯文;書評)
第4章 富士山荘をめぐる二篇(花火を見るまで;蝿ころし)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
120
お気に入りさんの感想で知ったのですが、このような本が出版されていたんですね。武田さんの富士日記は何度も読んでいて大ファンです。ここにはその魅力を様々な方が述べておられるのを一冊にまとめたものです。日記の一部や武田泰淳の文章も収められています。写真もあり再度この本を読みたくなります。これを読んでみなさんも分厚い三分冊の富士日記を手に取ってくださればと思います。2020/01/26
こばまり
58
著名な各氏によるファンレターのような書評をわくわくと読んだ。いつでも手に取れるよう、この本を複数家の中に置くような方もいる一方、私にとって『富士日記』は、むき出しの魅力に惹かれるが死の匂いも濃厚で、読むには胆力を要する作品だ。2023/01/03
ホークス
47
2019年刊。武田百合子著『富士日記』の批評集。泰淳没後の日記も60Pほど掲載。写真も興味深い。小川洋子氏の言う通り、抽象論や感情表現が少ない一方、具体物の描写に底知れない深さがある。愛犬の死体を埋めた後の「ポコ、早く土の中で腐っておしまい」という一文に見る強靭な世界観。多くの描写が、絵画のような感覚と解釈の奥行きを孕む。金井美恵子氏は様々な批評を踏まえた上で、武田百合子の天性を「事実の明晰さを追求する力」とする。詩作に通じるこの才能と、尋常でない生活力が、一人の人間に同居した。というのが、私の目下の結論2021/07/23
ぐうぐう
42
名作と呼ばれる良質な作品は、それが小説であれ映画であれ絵画であれ音楽であれ、様々な楽しみ方を可能としている。各紙誌に掲載された書評をはじめ、小川洋子らの書き下ろしエッセイも含めて『富士日記』の魅力を紹介する本書を読むと、『富士日記』という作品の懐の深さを改めて実感する。描写のうまさに感嘆する者、食べたものに着目する者、武田泰淳との関係性、あるいはご近所さんであった大岡昇平夫妻や外川さんとの交流に可笑しみを見出す者等々、幾通りもの読み方に気付かされるのだ。(つづく)2020/01/23
はな*
20
『富士日記』に寄せられた書評(各紙誌に掲載されたもの)や、武田百合子さんの魅力が存分に語られたエッセイがまとめられたもの。たとえば、須賀敦子さんは言う「弱っていた当時、私はゲリラみたいな彼女の文章の明るさ、力強さにすがりつく思いだった」と。冒頭に50ページほど掲載されている『富士日記』のその後の日記からも確かに伝わってくる。この"ゲリラ的な明るさや強さ"に、すがりついてきた読者が多いんだろうな。私も、すがりついてみたいと思う。2020/07/15