出版社内容情報
帰国した柴三郎は、福沢諭吉の支援を得て、伝染病研究所の設立を果たす。そこへ香港でペストが大流行との報が入り、現地へ。調査団からも感染者が出る過酷な状況下で、柴三郎はペスト菌を発見する。一方、東大閥との争いが激化。政治の思惑にも巻き込まれ、柴三郎は伝染病研究所を失うことになるが――。〈解説〉大村 智
〈目次〉
第三章 疾風の機
第四章 怒濤の秋
内容説明
帰国した柴三郎は、福沢諭吉の支援を得て、伝染病研究所の設立を果たす。そこへ香港でペストが大流行との報が入り、現地へ。調査団からも感染者が出る過酷な状況下で、柴三郎はペスト菌を発見する。一方、東大閥との争いが激化。政治の思惑にも巻き込まれ、柴三郎は伝染病研究所を失うことになるが―。
著者等紹介
山崎光夫[ヤマザキミツオ]
1947年福井市生まれ。早稲田大学卒業。放送作家、雑誌記者を経て小説家に。85年『安楽処方箋』で小説現代新人賞を受賞。医学・薬学関係に造詣が深い。98年『藪の中の家 芥川自死の謎を解く』で第十七回新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ブラックジャケット
10
北里を描いて明治・大正の日本の学会の病巣も明らかにされる。北里も東大卒なのだが、福沢諭吉の政府・官界への批判精神を受け継ぐ。官は権力闘争の結果しだいで旗色を変える。ドイツでの偉業を背景に日本を代表する防疫の権威となった柴三郎だったが、官界・帝大閥との抗争は、拠点伝染病研究所の支配権で激突した。すでに福沢はいない。薫陶を励みに私立北里研究所設立を果たした。さらに慶応大学医学部創設、初代医学部長、付属病院長と福沢の恩義を慶応に返した。疑問は、現代にまでつながる官と民の対立の遠因なのだろうか、ということ。 2020/10/11
すももんが
10
研究者としての柴三郎の活躍ぶりに胸を踊らせた上巻。続く下巻では研究所の長としての仕事が主となる。新しい研究所設立のため、政治的な根回しをしたりと、その辣腕を振るう。権力を手に入れた後も、国民の健康を守る伝染病研究者としての役割を忘れずに、終始一貫させた人生であった。文庫の表紙写真は素敵すぎる。顕微鏡を覗く柴三郎の姿に、思わず涙腺が緩む。2019/08/30
フンフン
8
ドイツで破傷風菌の純粋培養と抗血清の発見で世界的な名声を博したにもかかわらず、東大派の嫌がらせで浪人生活を送らなくてはいけなかった。北里は国費で留学させてもらった以上、日本で恩返しをしたかったが研究ができないなら研究費年額40万自由裁量、年俸4万という米国大学の申し出に乗ることも考えた。北里研究所出身で2015年のノーベル賞受賞者の大村智博士が解説で「徳弧ならず、必ず鄰あり」を引用している。ここで福沢諭吉が支援を申し出て私立伝染病研究所が設立される。北里の生涯は実に波乱万丈だったんだ。2024/02/29
桑畑みの吉
4
下巻では福沢諭吉の協力のもと研究所の設立、ペスト菌の発見、時代は明治から大正に移り研究所の所管トラブル等が詳細に描かれている。野口英世もちらりと登場してくる。本書は基本的に北里先生の偉業を描く小説であるが癇癪(雷)、妾の存在、息子のスキャンダルにも少しだけ触れている。それにしても北里先生が第1回ノーベル賞を受賞していたら日本の歴史が少し変わったかなと考えないでもない。2020/07/06
チャゲシン
3
コロナが流行り、次の千円札に決まったとあって、なんともタイムリーな本ですわ。で、日本の伝染病研究の第一人者、北里柴三郎博士の後半生。米英から破格の待遇での招聘を断り帰国したものの、東大閥の権威主義の前に不遇の日々を送る北里博士だが、福沢諭吉等の支援を受け伝染病研究所を設立、やがてはペスト菌を発見し、教え子たちからも次々と世界的発見がなされてゆく。いや、しかし、福沢諭吉って凄いな。また、北里博士を支えた人達も凄い。何より逆境にあっても夫を励まし続けた奥さんが凄い。感涙モノの傑作です2020/03/16