出版社内容情報
山中で育ち、熊をも仕留める大力を持つ坂田公時。彼は武門の頭領・源頼光に従い、武人として都へ上る。身分の境に塗れた都に戸惑う公時は、夜な夜な現れる鬼の噂を耳にする。一方、神の棲まう山・大江山では、人々がしきたりに囚われず自由に暮らしていた。しかし、山を訪れた不審な男を追い払った日から、食糧たる獣たちが姿を消す。頭目の朱天は、民たちの命を守るため、都で盗みを働く決断を下す。公時と朱天。都と山。人と鬼――。交わるはずのない二つの思いが交錯するとき、歴史を揺るがす戦が巻き起こる! 平安史に突如現れる「酒呑童子伝説」の謎。その実像は、生きる権利をかけた人と人との戦争であった。
内容説明
大力の青年・坂田公時は武士になるため都へ上る。初めて知る身分の境に戸惑う彼は、ある日「鬼」の噂を耳にする。一方、神の棲まう山・大江山では食糧たる獣たちが姿を消す。里の長である朱天は仲間たちのため、盗みを働く決断を下す。公時と朱天、都と山、人と鬼―二つの魂が交錯する時、歴史を揺るがす戦が巻き起こる!
著者等紹介
矢野隆[ヤノタカシ]
1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』にて第二一回小説すばる新人賞を受賞。18年福岡市文化賞を受賞。痛快な戦闘シーンと大胆な歴史解釈で注目を集める気鋭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つねじろう
67
そう鬼の話しです。鬼って本当に居たの?誰に対しての鬼なの?っていう疑問に応えてくれる。平安時代の政争と貴族の私利私欲の為の情報操作。どちらが鬼だよってやり切れない気持ちになる。自分に脅威を与えるものは認めない、都合の悪いもの理解出来ないものは鬼にしてしまおうみたいな。何か今の時代の何処かの国とシンクロする様な話しだなあと思いつつ読み進む。源頼光の男振りが良い。酒呑童子に心を寄せる坂田金時の懊悩も愛らしい。歴史はその時代の勝者によって作られるとよく言うが鬼にされ本当に鬼になって荒れ狂う彼らの最後に涙します。2019/06/07
如水
33
♪ま~さかりっか~ついで金太郎~♪の坂田公時(きんとき)が主人公。童謡と同じくほのぼの~…とした話じゃ有りません。禍々しくかつ『平安時代の人が生きる術』をふんだんに盛り込んだ御話し。酒呑童子=公時討伐の話が普通ですが、此処では討伐は合戦、として描かれてます。題名も鬼神と書いて「おにがみ」。鬼とは誰なのか?神とは誰なのか?鬼と人の境目は?と言う事を随所に問いかける歴史小説。冒険譚だと思ってたら…何か凄い内容見せられた、と思って本を閉じる事間違い無し!な内容です。2022/01/26
Tadashi Tanohata
22
「金太郎」坂田金時の成長記。ただし熊に跨っている場合ではない。金時が鉞を担いで鬼と化すも、もっと強いやつが続々と登場する。人と鬼と神の魂が交錯する壮絶な戦闘シーンは圧巻。誰が正義で誰が邪悪かは控えますが、丸金の前掛けなど微塵も想像するべからず。2021/12/22
マツユキ
15
母と二人、山で暮らしていた坂田公時は、源頼光に迎えられ、都で武士として生きることになるが…。大河を意識して読んでみました。悪巧みする晴明と道長。どっちが鬼だ。同じ人なのに、鬼と呼んだり、神と呼んだり、都のやり方に嫌気が差し、悩む公時と頼光を頼もしく思いました。朱天との交流シーンは、戦闘も含めて、爽快。人か鬼かという問いかけが、読んでいるうちに少しずつ変わった行くように思えました。頼光四天王かっこいい。綱が女性なのも、好みです。2024/01/29
yamakujira
7
頼光に見出されて上京しながら、出自や身分に縛られる都の生活になじめない坂田金時は、鬼が籠る大江山への潜入を命じられる。クライマックスは頼光と四天王による酒呑童子退治なのだけれど、そもそも大江山の資源を狙った道長と清明の策謀で山の民が煽られるって背景を作ることで、まつろわぬ民を鬼と蔑む権力者の非情と都人の蒙昧があぶり出される。男たちの群像劇として哀しくも楽しく読めたものの、いくらなんでも足柄山にヒグマはいないし、綱を女性にした意味がわからないし、朱天のラスボス感はまるで漫画みたいだな。 (★★★☆☆)2021/06/03