出版社内容情報
生涯最後の旅と予感している夫・武田泰淳とその友人、竹内好とのロシア旅行。星に驚く犬のような心と天真爛漫な目を以て、旅中の出来事、風物、そして二人の文学者の旅の肖像を、克明に、伸びやかに綴った紀行。読売文学賞受賞作。解説・阿部公彦
武田百合子[タケダユリコ]
著・文・その他
内容説明
生涯最後の旅と予感している夫・武田泰淳とその友人、竹内好とのロシア旅行。星に驚く犬のような心と天真爛漫な目を以て、旅中の出来事、風物、そして二人の文学者の旅の肖像を、克明に、伸びやかに綴った紀行。読売文学賞受賞作。
著者等紹介
武田百合子[タケダユリコ]
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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aika
41
タブーなんて一切ない天衣無縫な百合子さんが、夫の武田泰淳と竹内好という大変な二人を相手にしながら単語の小気味良いリズムで彩る、まだソ連だった時代のロシア横断・北欧への旅。飽き飽きしそうな食べ物と酒、そしてトイレ事情は強烈でした。わがままで一緒に旅をしていたら疲れそうな銭高老人も、百合子さんの目をとおして見るとどこか憎めないユーモラスな人に思えるので不思議です。聞きかじったロシア語でどんどん現地の人と会話をするエネルギーや、街で一瞬だけすれ違った少女たちや老人のことを詳細に記録に残す観察眼に感嘆でした。2021/08/25
ロア
28
武田泰淳のエッセイ『目まいのする散歩』でロシア旅行に触れているヵ所がとても輝いていて、それが百合子さんの日記から引用(?)されているとの事で、興味を持ち手に取った。予想通りというか期待以上というか…素晴らしかった!40年以上前の旅行記なのに、今目の前で起こっている出来事のように生き生きとして、まるで自分もその場に居合わせているかのよう。天真爛漫な百合子さんと銭高老人が可愛らしい。楽しく読みながらも時々「この本に出てくる人達みんな…もしかしてもう誰も…」と思う瞬間があって、楽しいからこそウルっとしてしまった2022/10/02
奏市
17
やはり著者独自の物事の切り取り方、表現法で大変面白かった。ソ連多くは中央アジア、スウェーデン、デンマークの旅行記。著者と旦那さんの武内泰淳、夫妻と長い付合いの竹内さんの3人が関西からのグループと一緒に巡る。シベリアのホテルでトイレも風呂も茶色の水でも「別に驚かない。かえって栄養があるミネラル水かもしれない」さすが。これくらい思わないとな。泰淳氏「酒の手持ちがないと思うと、思っただけで、あたりの景色は黒白、酒の手持ちがあると思うと、あたりの景色は天然色」わかるなあ。銭高老人面倒臭いがいないと強烈に寂しい。2022/11/20
ホースケ
17
あー楽しかった。旧ソ連から北欧までの旅行記。季節もまさに6月から7月の今、旅と同じくひと月近くかけて読んだおかげか、一団に同行させてもらったような気分になる。が、そのリアリティさの源泉は、見たまま感じたままを率直に表現する、武田百合子氏の文章の力によるところなのだろう。戦中戦後の記憶を片隅に旅をする面々のタフなこと。船、鉄道、飛行機を乗り継ぎ訪れる各地は社会主義の国ならではの事情に驚かされるが、なかでもトイレをめぐる問題は切実だ。しかし著者は、その大変な状況さえも淡々とした筆で描く。ふいに思い出したのは、2020/07/02
ikedama99
14
「富士日記」で妙にひかれた感覚を思い出した。夫とともに参加したロシア旅行。あちこちでの息苦しさを感じないわけではないが、それでも「旅行」といえども「生活」だと思わせてくれた。日々の流れが絶え間なく次の日に続いていく印象を持った。面白かった。また、「富士日記」を読みたくなった。2024/10/20
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