出版社内容情報
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内容説明
書くことには集中があり、対話には挑発があり、談話には自由がある―。現代の異端の本質を考察した連作エッセイ「内なる辺境」、文学、演劇など芸術観のすべてを語った「都市への回路」。孤高の前衛作家の創造の核心を知りうる好著の合本。「カメラによる創作ノート」である著者撮影の写真を多数収録。
目次
内なる辺境(ミリタリィ・ルック;異端のパスポート;内なる辺境;“チェコ問題と人間解放”;鎖を解かれた言葉たち(萩原延壽×安部公房)
続・内なる辺境)
都市への回路(都市への回路;内的亡命の文学;変貌する社会の人間関係)
あとがき
著者等紹介
安部公房[アベコウボウ]
大正13(1924)年、東京に生まれる。少年期を旧満洲の奉天(現在の瀋陽)で過ごす。昭和23(1948)年、東京大学医学部卒業。同26年『壁』で芥川賞受賞。以降、『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。平成5(1993)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
56
エッセイと対談、インタビューをまとめた一冊。正統と異端、農村と都会、芝居に写真に文学論と、阿部公房を理解するに当たって重要なキーワードが本人の言葉で記されているのは貴重。特に興味深かった部分はラテンアメリカ文学、特にガルシア=マルケスへの評価。ただ四十~五十年近く前の発表という事で、現在の眼から見ると気になる部分も多々あり。社会主義への評価とか農村と都会の問題を形而上な問題として取り扱っている部分とか。ともあれ昔熱中した身としては、かつて読んだ作品の作家自身による解説としても面白く読むことが出来た。2019/10/10
Vakira
34
なんと コボさん 新刊と思いきや「都市への回路」と合体して再版らしい。とにかく読んでなかったので見つけて嬉しい、即買い。コボさんのエッセイは初読みだ。「内なる辺境」とは人間の内面的な話と想像。But全然違いました。人間の集合体における「正統」と「異端」の話で、国家に内在する異端のことであった。この正統と異端、言い換えれば定住と冒険。その考えは遥か大昔の人類の起源におよぶ。コボさん 凄い地頭力。人類の進化に思いを馳せる。人類の前の原人、肉食のアウストラロピテクスと草食のパラントロプスは一定期間共存していた。2019/06/18
モトラッド@積読本消化中
31
★★★★☆『安部公房全作品』に収録されているだろうから、大学生の頃、一度読んでいる筈だが、記憶がない。多分、と言うか間違いなく、その若さでは理解できなかったのだろう。勿論、若い人が云々と言う意味ではなく、私自身の問題として…。今、改めて文庫本を手にし、大変興味深く、面白く読むことが出来た。安部氏が、興が乗って、ご自身の考えを読み手に伝えようと、腹を割って語っているのが、良くわかる筆致で、それが、ファンとしてとても嬉しかった。とくに「都市への回路」が良かった。少しでも興味がおありなら、読まれると良いと思う。2024/11/27
風に吹かれて
17
1971年刊『内なる辺境』、1980年刊『都市への回路』など収録。 文体についての安部の語りがとても理解しやすい。翻訳で文章は消えるが文体は消えない、文体は構造に関わることなのだ、という旨の説明が腑に落ちた。人間の在りよう、社会の在りよう、時間の在りよう、そういったものの「構造」を書き現わすのが文体だということだ。 そして、現代の文学の課題は「都市」を描くこと。公房の作品には失踪や逃走がしばしば描かれる。まさに都市の辺境への失踪や逃走だ。➡2020/11/16
浪
14
エッセイとインタビューを収録。著者にとって文学とは言語という論理から直感を見出し、さらにその直感から論理を生み出していくというような螺旋運動であるという。そしてそれが人間の精神の展開であるとも。直感(感情)ばかりが先行し論理(理性)が軽んじられる傾向にある現代には重要な考え方だと私は思う。2019/09/22
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