内容説明
山の中で盗賊に襲われたゼンは、用心棒らしき侍と剣を交える。強い。おそらく、勝てない―歴然たる力の差を感じながらも辛うじてその場を凌いだゼン。彼を戦慄させた凄腕の剣士には、やむにやまれぬ事情があった。「守るべきもの」は足枷か、それとも…。
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
作家、工学博士。1957年、愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年に『すべてがFになる』(講談社)で第一回メフィスト賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
67
剣を極めた人間が学んだものは、剣だけのことではない。剣だけではないところに、剣の道がある。何かの技を極めれば、すべてが見通せるにちがいない。立ち合えば自分は必ず死ぬだろうと感じたキクラとの出会い、剣の筋を読み会得する才能はずば抜けているゼン、ようやくカシュウ以外の人との出会いとふれあいで人の心を読む努力を始める。彼のまっすぐで純朴なところが、森先生の文章の巧みさでいたるところから伝わります。壮絶な斬り合いのラスト、キクラの仇討も敵大将の余りの弱さからこれ以上は無意味、殺すことだけが刀ではないと悟りました。2016/04/01
佐島楓
58
明らかに自分より強い剣士と出会うゼン。彼の生き方を見て、ゼンは思いをめぐらす。剣士として強くなる意味、剣を持ち人を斬る意味、命を奪うということ・・・。ゼンは知恵を蓄え、成長していく。次巻が最終巻とのこと、楽しみである。2016/06/22
神太郎
35
今回も面白かった。巻を重ねていくごとに面白さが上がってると思う。そして、ゼンの思考も深く深く沈んでいく。強さとは何か。仲間を伴侶を作ることは弱さにつながるのか。人を斬らなくても良い方法はないかなどを思案し続ける。単なる強さを求めるのではない異色の剣豪小説もいよいよ佳境へ。次回でいよいよ最終巻。ゼンの旅はどこへ終着するのか。2024/10/05
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
33
哀愁漂うとは正にこのこと。 最終巻を前にしてもまだまだ迷うゼン。物語はどう締め括られるのやら。2020/05/20
hope
31
★★★★ 森先生15冊目。シリーズ4作目。僕は我が子のようにゼンの成長を見守る。侍はなぜ刀を持つのか。刀は人を殺す道具だ。剣士として強くなる意味と人を切り命を奪うということ。 ゼンが出会った自分よりも強い剣士は病を患う妻と旅をしていた。「女を愛でることは、君主に尽くすことと、なんの変わりもない。私はそう思う。こんなことを言ったら、笑い者になるだけですが」→2019/06/05