内容説明
薄れさせてはいけない。あの時に感じたことが本物である―罹災者の肉声、災害と国民性、ボランティアの基本原理、エネルギーの未来図…。被災地を歩き、多面的に震災をとらえて大きな反響を呼んだ唯一無二のリポート。鷲尾和彦による写真十六点を収録。その後の東北をめぐるエッセイを新たに付す。
目次
1 まえがき、あるいは死者たち
2 春を恨んだりはしない
3 あの日、あの後の日々
4 被災地の静寂
5 国土としての日本列島
6 避難所の前で
7 昔、原発というものがあった
8 政治に何ができるか
9 ヴォルテールの困惑
東北再訪
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年、北海道帯広市生まれ。旅と移住が多く、ギリシアには75年から三年間滞在。小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)等多数
鷲尾和彦[ワシオカズヒコ]
1967年、兵庫県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。98年より独学で写真を撮り始める。2002年、清里フォトアートミュージアム主催「ヤング・ポートフォリオ」入選。06年、ガーディアン・ガーデン主催「フォト・ドキュメンタリー『NIPPON』」入選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
68
この言葉が当てはまるかどうかはわからないけど…私たちは、5年前をちゃんと心に留めて、不幸な目にあった方々の苦労を無にしないようにちゃんと立ち上がっただろうか。自然に抗う事は難しい。でも人間が作ったもので未来の子供達から預かっている今の日本や地球をダメにして良いのか?お役所に任せるだけでいいのか?そう問いかけられたような一冊である気がする。便利は幸せとは繋がらない。まだまだ、元の暮らしには戻れずご苦労を重ねている方もいる。涙を心にしまって、歩みだしている人もいる。そう。みんなで支えあって歩き出さなきゃ。2016/04/10
HANA
61
東日本大震災からあと一か月で五年。にもかかわらず何故だか自身の一報を聞いた時の事は今でもはっきりと思い出せる。五年間で様々な事が変わったけどあの日の事を思い出すたびに、何となく重い石を飲み込んだ様な心持にされる。おそらく人にはそれを経験したら以前の自分に戻れないという出来事があり、日本人にとってはそれがあの日だったのではないかと思う。内容は震災を巡ってのエッセイなのだが、全体的に文章をまとめる以前の思考の塊をいくつも並べているような印象もあり、あの日以来のあらゆる混乱を何となく彷彿とさせるようだった。2016/02/11
ゆうゆうpanda
46
人はどこまで他人の境遇に沿うことができるか。6年前の今日、映されなかっただけで、確かにそこにあった遺体。命があっただけでも有り難いと粛々と運命を受け入れていた被災者の方々。東北の人々は我慢強いと感心した私は、東北の~と付けることによって巧妙に距離をとろうとしていたのかも。自分を安全な場所におきながらの同情。偽善と言われても反論できない煩悶に今もまだ悩まされる。原発問題や行政について積極的な意見を言う勇気もなく。悲しい歌枕の地がまた増えてしまった東北。前向きな句で上書きしてあげることくらいしか思い付かない。2017/03/11
Shoji
42
池澤夏樹さんが東日本大震災から5ヶ月の間、現地を訪れて見聞きし考えたことをまとめた本。阪神淡路大震災と東日本大震災、そしてコロナ禍。確実に人々の価値観は変わったと思う。多くの犠牲者を出し、今もなお苦しんでおられる方が多数いらっしゃる。私は「あの日あの時」を決して忘れないでいようと改めて思った。2021/06/06
空猫
33
また春が、桜の咲く季節が、3月11日がやって来る。人間がどんなに辛い状況にいようとも、季節は巡る。これは震災後1ヶ月足らずで支援と取材に出向いた著者の体験エッセイ。太古より噴火、地震、台風、災害、、天災で日々の暮らしを奪われてはゼロから作り上げてきた日本人。けれど原発による放射能の被害は明らかに人災だ。増加した国民の口を糊する為に起こした大戦。原子力開発は我が国の資源の無さを憂えたからか。それとも…。多くの人々に読まれてほしい一冊。2023/03/11