内容説明
「勝者」とは、現代世界に適合的に生き、たえず新しい世界を切り拓いて行ける人間を意味する。―この定義のもとに、日本人の英知、民族の知恵の再発見を提唱。ルネサンスと日本の戦国時代の類似点から、絶対的勝者の先例として、信長・秀吉の事例を考察し、混迷の時代を生き抜くための指針を示す。
目次
1 勝者の条件(勝者の条件;日本と日本人を考える―民族の英知に学ぼう;裏門の人間関係―「日本再発見」のすすめ;愛国心)
2 覇者の条件(覇者の条件―秀吉と近代合理主義;秀吉政権とその時代;商人と生甲斐;港の文化史的意味―海の精神と陸の精神)
3 チャレンジ的人物誌(信長の場合―成功したやり方を放棄する;カテリーナ・スフォルツァー―徹底的女性;孤独恐怖症と孤独の追求;バサラ(物狂いの精神)のすすめ
自由自在に生きたある一人の男
チャレンジ的人間を育てる条件)
著者等紹介
会田雄次[アイダユウジ]
1916年(大正5)京都府に生まれる。40年(昭和15)、京都帝国大学史学科卒業。43年(昭和18)に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後二年間、英軍捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学、京都大学(人文科学研究所)をへて、京都大学名誉教授。専攻はイタリア・ルネサンス史。97年(平成9)、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
93
西洋史家の著者が昭和50年頃迄に書いた様々な考察を収録。著者は「アーロン収容所」の作者として有名だろう。秀吉と信長の著述に興味があり手に取る。しかし会田氏の戦後教育と日本の将来への憂慮が印象に残る。実際に現代の日本は会田氏の憂慮どおりに歩んでいると言えよう。敗戦でアメリカの理想主義を押し付けられた。憲法や教育等である。そんな教育を受けた人々は自国を卑下し、既にアメリカで破綻した理想に縋る。自主憲法制定など夢のまた夢か。結局はアメリカを模倣した社会が誕生している現在がある。時を経たからこそ読む価値がある。2021/01/31
手押し戦車
28
光を観るで観光。いつの時代も明るく輝く人が勝者になる。どんな事もドミノ倒しのように手前から必ずすべてを行っている。人を褒めたり商品を広めるのも身近な人から広め後は自然と広がっていく。貧乏なフリをして相手に優越感を与えるのは勝利を出来ない二流の武将で名武将は良い意味での格好のつけ方を熟知していて、こんな人に成りたいという豊かな人から頭を下げることで相手に優越感を覚える感じを出させていた。戦を10倍楽にすると勝利は10倍上がる。戦の中で勝利を得るのではなく事前の戦略が大切ということも熟知していた2015/07/17
Tadashi Tanohata
18
とにかくこの作者は嘆いている。半端なく高度成長期の日本人を嘆いている。教育を、倫理を、そして精神を。作者の戦争体験、捕虜経験がそう言わせるのか、嘆きに嘆きまくっている。勝者は織田信長、豊臣秀吉だとその事例を考察する、そんな一冊です。でもなぜ2015年に初版発行されたのか、教えてください。2017/02/24
yo
8
「敗者の条件」の続きで、ある意味で「勝者」と言える人間の特質を、ルネッサンスと戦国時代の比較を中心に据えながら論じ、さらには日本人の特徴や日本的な価値観などにも言及する。「裏門の人間関係」に関しては、今でも、例えば大学の「ゼミ飲み会」に教授も混ざって一緒に酒を飲んだりすることにも表れている気がする。少なくともアメリカではそういうことはないらしい。また、チャレンジ的人物として、日本の教育を批判的に見ているが、これはまさしくその通りで、何でも手取り足取りでも、ご褒美で釣るのでも、子供は成長しない。2016/07/13
まろにしも
8
★★★★ 「アーロン収容所」でこの著者に興味を持った。綺麗ごとの御託を並べたてる学者とは異なり、刃物のような鋭さでグイグイと核心を切り込んでいく。信玄や謙信ではなく、何故、信長、秀吉が天下をとったのか、非常に面白く読んだ。この著者の鋭い人間観察眼は、捕虜体験によるものだろうか。2015/08/14