内容説明
中国を舞台にした義侠心あふれる女傑のはなしや雪女の怪談、コナン・ドイルばりの怪獣奇譚、そして新聞記事に心をさいなまれてゆく娘の悲劇「慈悲心鳥」など、青蛙堂主人のもとに集う人々がかたりあう、古今東西、探偵趣味の横溢する短篇拾遺集。附録として単行本未収載の短篇二篇を添える。
著者等紹介
岡本綺堂[オカモトキドウ]
1872年東京生まれ。本名は敬二。元御家人で英国公使館書記の息子として育ち、「東京日日新聞」の見習記者となる。その後さまざまな新聞の劇評を書き、戯曲を執筆。大正時代に入り劇作と著作に専念するようになり、名実ともに新歌舞伎の作者として認められるようになる。1939年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
45
満州に出没する雪女、蜘蛛の巣の様に絡み合う商家を襲う怪異、海より現れる馬。数々の興味を引かずにはおかないその様は読物の名に恥じない。探偵小説とはいうものの、各話とも非常に幅広い。舞台も江戸から南洋、満州まで、内容も理に落ちる探偵小説から最後まで曖昧模糊とした怪談じみた話まで。それが円熟の筆で語られるのだからもう堪らない。一見怪談じみて最後には理に落ちる「蜘蛛の夢」もいいが、最後まで何だかわからない「馬妖記」もいい、「利根の渡」を彷彿させる「放し鰻」も堪えられない。全編とも兎角読み応えがあったってことで。2015/04/15
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
41
青蛙堂にて集まった人々が探偵趣味の話、怪奇幻想話を語る。探偵ものらしく、犯人がハッキリしているものもあれば、幻想的で人の仕業なのか、妖のものの仕業なのかわからないようなものもあり。人から聞いた話から、自分の体験談や手記など様々。語り手も様々なら話の舞台も様々。明治期の日本、江戸時代の話、南の島で起こる怪異、中国の幽霊妖怪譚、などバラエティに富んでいる。冒頭の「ぬけ毛」ってもう題名だけで嫌。長い抜け毛が櫛に残ってる……ゾッ!「慈悲心鳥」が悲しく切ない。2016/09/09
澤水月
24
妖怪か害獣か厭な人間系かわからず異世界に翻弄される馬妖記は白眉。江戸ばかりでなく中国、フィリピンまで舞台となり展開される怪奇探偵奇談よりな作品群。髪の毛は怪談に絡むこと多いが綺堂の毛髪怖さの着眼点はなんとも独自だと思う(ぬけ毛など)。付録はこれまで未収録もわかるようなエーっと叫ぶようなオチで楽しい。青蛙堂物は区切りか、発表年代が大正から昭和になってきた。もっと読みたい2018/09/15
ちくわん
20
2014年6月の本。Kindleで購入。ぬけ毛、女侠伝、蜘蛛の夢、慈悲心鳥、馬妖記、山椒魚、麻畑の一夜、放し鰻、雪女、平造とお鶴。付録で、その女、三国の大八。時代も場所もバラバラ。探偵というか推理ではなく、怪奇もの。それでも綺堂らしさを感じる。2023/01/09
ぶんぶん
20
【図書館】岡本綺堂読物集の五巻目、お馴染みの青蛙堂に集う人達から採取した探偵譚。 「探偵夜話」の拾遺版と言ったところ。 探偵と言っても綺堂の事ですから、スッキリ終わる話ばかりでは無い。 謎解きに怪談が交じれば、単なる犯人当てになろうはずが無い。 「ぬけ毛」「山椒魚」辺りがゾッとする。 しかして、綺堂と言う作家は読み易く書いている、普通古い文章と言う物は、もっとしつこく書いても良い様に思うが、すんなり頭に入る、戯作者としての気配りなのでしょうか。 次は「異妖新篇」に取り掛かろう。2021/08/14
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