出版社内容情報
事故で片足を失った女優のため、世界一の義足を作ろうとするデザイナー。二人は惹かれ合うが……。「生」と「愛」を問い直す長篇。
内容説明
事故による大怪我で片足を失った女優と、その義足を作ることになったデザイナー。しだいに心を通わせていく二人の前に立ちはだかる絶望、誤解、嫉妬…。愛に傷ついた彼らが見つけた愛のかたちとは?「分人」という概念で「愛」をとらえ直した、平野文学の結晶!
著者等紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975年愛知県生まれ。京都大学法学部卒業。99年、在学中に文芸誌『新潮』に投稿した「日蝕」により芥川賞を受賞。『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』でドゥマゴ文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
74
女優叶世久美子と デザイナー相良郁哉の愛の物語である。自動車事故で大怪我を負った久美子と 義足デザインをおこなう相良との心の交流が 丹念に描かれる。傷ついた二人が 徐々に心を寄せていく様が繊細に描かれる。 ヒリヒリするような二人のせめぎ合いが いかにも著者らしい。義足になった久美子と それを支える郁哉の再生の物語だった。 2025/04/26
優希
60
設定としてはありふれた恋愛小説だと思います。交通事故で義足にしなければならなくなった女優と、義足を作ることになったデザイナーの物語。時が経つにつれ2人が未知の世界へと誘われていくのには興味が持てました。体の一部を喪うこと、失われた一部を埋め合わせることとはどんな想いなのだろうと考えさせられました。2023/01/08
かみぶくろ
50
3.7/5.0 いまいちピンと来ないのは、自分がもはや恋愛小説になんのときめきも抱けないせいなのか??美しい文章で表現された恋心や恋愛の発展にどこか冷めてしまう自分がいて苦笑してしまった。2022/05/14
崩紫サロメ
43
交通事故で片足を失った女と、その義足を作る男の恋愛小説。私の祖父も交通事故で片足を失い、その後ずっと義足で生きてきたということもあり、身近に感じられるテーマであった。面白さを感じたのは、義足の作り手が主体となって語れているところ。プロダクト・デザイナーと呼ばれるのだが、自分が心血注いで作った義足に、彼女の血が通う瞬間、それこそが彼にとっての至福なのだ、と。タイトルの意味には様々な含意があるのだが、失われた身体を補うという究極的な「かたち」から入った愛、その先に見える希望。読後感の良い小説だった。2021/11/15
akio
37
愛を信じない相良と、片足を失った魔性と呼ばれる美貌の女優、久美。痛むはずのない幻痛に悩まされるのは、なくした久美の足であり、過去の痛みであり、相良にも痛み続ける過去があることを気付かせます。そんな相良の愛は献身だけでは久美を満たせず、利他でありながら利己でもある形へ変わっていきます。計らずも愛することが相良自身の肯定となり、共にいることで互いを補完し深めあっていく二人。それは幻痛を乗り越える未来への希望になりえるのです。ラストシーンまで美しいド直球のラブストーリーに大満足です。2018/11/27