出版社内容情報
あの日、たしかに二人は別れたはずだった。けれど僕らは同じ灯を見つける、何度でも――。恋愛小説の名手が東京とフランクフルトを舞台に綴る、時を超えた純愛と魂の救済の物語。
内容説明
大手出版社に勤める高林直人は、二十七歳のときドイツ出向を命じられる。それは学生時代からの恋人、山本理沙との別れを意味していた。フランクフルトで同僚と男三人の共同生活を始め、現地の女性ステファニーと恋に落ちる直人。ところが日本に帰国して後、三年以上も音信不通だった理沙の消息を知ることになる…。
著者等紹介
大崎善生[オオサキヨシオ]
1957年、札幌市生まれ。2000年、『聖の青春』でデビューし、新潮学芸賞を受賞。翌年『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を、02年には『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
142
「別れとは、意味不明になること」て、そういう時代もありましたが、SNSが発達した現代では、そうも言ってられません…。フランクフルト空港の冒頭は、春樹さま作品か?もしくは私の青春か?て感じで私自身の20代を思いながら読了。当時のドイツ人の恋人、20代後半に訪れた真冬のドイツなどなど。話を物語に戻すと、いいんじゃない、この主人公?若いのにちゃんとその場その場で決断しててエラい。元恋人のステちゃんだけど、彼女だったら大丈夫。すぐに次の恋人できるから(経験者は語る)。久しぶりの大崎節、堪能いたしました。2015/12/22
おしゃべりメガネ
80
【追悼~大崎善生】「山崎」シリーズからちょっと離れての本作です。いい意味で作風が安定してるので、世界観に違和感なく、スッと入っていけます。とある大手出版社に勤務する「直人」はドイツ出向を命じられ、恋人「理沙」との付き合いも別れざるを得ない展開に。失意のまま、ドイツはフランクフルトで過ごしていくうちに現地のスタッフ「ステファニー」と出会い、距離を縮めていきます。ドイツ出向期間を終え、日本に戻った彼にある一本の電話が入り、電話の相手はなんと「理沙」の母親からでした。大崎ワールド全開の切ない恋愛小説でした。2024/08/10
びす男
64
二人の女性が出てくることで、より愛情の純粋さが際立っている。はっきりしない男に対して、強い女性と沈黙する女性が、いずれも美しい。二つあるからといって、必ずしもどちらかが本物でどちらかが贋物であるわけではない。どちらにも真実が宿る場合だってあるのだ。2016/10/09
巨峰
61
深くて静かな愛の物語。そもそも、迷いなく入籍しておけば、こんなことにならなかったような気もするが、最後のところがそれで良かったとも思いました。フランクフルトの話が良かったです2021/01/11
麦
18
もうね。冒頭の文章を読んだ時点でしんみりとさせられ、泣きそうになってしまう。ドイツへの転勤を命じられた直人。当時付き合っていた理沙と傷つけ合いながらも道を模索するが結局は別れることに。孤独なドイツ生活で希望の光となったのはステファニー。彼女がいなければ直人は打ちひしがれ、悲惨な日々を送っていただろう。やがて日本に帰国した直人は理沙が直面していた現実を知る。 進んだ時間と止まった時間。理沙と過ごす昼下がりの日常があまりに眩しく愛おしい。この作家の作品は2作目ですがどれも大好きです。心の奥底に刺さりまくる。2024/07/09