内容説明
百貨店の寝具売場に勤めながら百科事典の執筆に勤しむ“小さな男”。ラジオのパーソナリティで、日曜深夜一時からの生番組に抜擢されたばかりの三十四歳の静香。“小さな男”と“静かな声”、交互にあらわれる二人の語り手から、ささやかな日々のいとおしさが伝わる物語。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作と装幀の仕事を続けてきた。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
137
若い頃であったなら、かなり読み飛ばしていた本であると思いました。現在のわたしにとってはちょうどいい感じのスピード感の本だと感じました。二人の人物が交互に自分の内面を書かれていて、読んでいて海外のエッセイ的な作品を思い出しました。最近の状況だとまどろっこしいと感じる方があるかもしれませんが、このような本を読むことで世間のわずらわしさを忘れさせてくれる気もしました。2024/03/12
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
109
☆5.0 吉田さんは、私にとって、難しい小説に苦戦している合間に、読むのにぴったりの作家さん。このお話しもまさにそう。難しいことを忘れてただ行間の文字を追う。なんだかすらすらページが進んでいく。お話の内容は気にすることなくね。2021/05/17
はっせー
103
穏やかな雰囲気の本が好きな人や深夜のラジオが好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!この本の主人公は2人いる。小さな男と静かな声。この2人の視点で描かれるものがたりである。小さな男は色んなことをノートに書く人でそして色々と物事を考えるのが好きなタイプ。静かな声も似ている部分がある。色んなことを考えるのが好きなところがある女性である。しかし実際の関わりはこの本ではない。だがこの2人の背後にいる人や出来事が巡り巡ってお互いに伝わる。顔や表情はわからないが想いという空気が循環されている。そんな感覚がした!2022/12/01
優希
71
雑音のない静かな世界が広がっていると思いました。「小さな男」と「静かな声」の長い自己紹介のような断片が続いているのですが、それが妙に心地よかったです。ささやかな日常が愛おしく感じられてなりませんでした。日々を丁寧に過ごし、考えているのが伝わってきます。「小さな男」と「静かな声」が僅かに交錯する瞬間は美しく感じます。とても柔らかくゆったりとした雰囲気に身を委ねるような感覚を覚えずにはいられませんでした。心がほぐれていくような優しさにあふれた作品だと思います。2014/12/24
mint-s
62
百貨店勤務の小さな男とラジオパーソナリティの静香のささやかな日常が交互に語られる。大きな変化のないそれぞれの生活、それでも少しずつ変わっていく様子を眺めている感覚。夜の静けさの中で言葉をじっくりと味わいながらゆっくりと読むのが好きでした。2022/06/06