内容説明
世界のスーパーパワーの位置に登り詰めつつある中国に「民族主義」という名の亡霊が蘇る―。元『人民日報』評論員であり、中国における「言論解放」の最先端にある著者が、アヘン戦争や義和団事件、文化大革命、二十一世紀に入っても盛んな反日運動を鋭く分析。現代中国を知るための必読の書。
目次
曲がった枝 吹き荒れる民族主義―民族主義思潮
対日関係の新思考
「対日関係の新思考」への反響
現代中国の民族主義
なぜ民族主義がいらないのか
情緒化を避ける
「対日関係の新思考」解説(杉山祐之)
「新思考」その後―『“反日”からの脱却』文庫化に際して(杉山祐之)
著者等紹介
馬立誠[バリッセイ]
1946年中国四川省成都出身。中国青年報評論部副主任を経て、人民日報評論員。2003年から04年まで香港・フェニックステレビの評論員。現在は北京で作家・評論家として活躍中
杉山祐之[スギヤマヒロユキ]
1962年鹿児島県出身。東京外国語大学中国語学科卒業後、読売新聞記者。ハノイ支局、三回の北京勤務を経て、2010年より東京本社国際部所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
5
中国の論者からみた自国の民族主義。ようは民族主義ではいけない、グローバル化を目指さなければいけない。ということであるが、それを民衆の側だけに求め体制には何も言わない(言えない)のが中国の知識人の限界だと思う。この文章が発表されたのが21世紀初頭、その後の動きを見ると民族主義の克服どころか、中国はどんどん馬脚を現している。2011/06/06
seer78
4
著者は前『人民日報』論説委員。バランスの取れた筆致で中国内外の民族主義を論じる。驚いたのは、学術文献からの引用の的確さ。マルクス・エンゲルスは当然、ヨーロッパ古典からフランクフルト学派まで幅広い。それらを現実の事象に当てはめる手つきの巧みさ。内容面では、日本への言及は表題論文でこそ多いが、主要題目は米国を中心とした国際環境への対応とそれを危うくする民族主義の台頭へ警鐘を鳴らすことだろう。二点疑問あり。民族主義批判が、中国での少数民族権利要求にどう関わるか。もう一つ、翻訳・解説者の自己相対化の欠如に違和感。2016/01/28
ハンギ
0
中国人の著者で元「人民日報」論説委員が勇気を持って、民族主義を批判した本。中国に知識がない人はおすすめだと思う。訳者による60ページにもなる解説もけっこういい。中国の認識を新たにしました。日本と違って、左翼思想が根強い中国ではそれが民族主義と結びつき、国を動かしかねない勢力になっているという。日本の場合は右翼的思想が民族主義と結びついていたりするので真逆なのは面白い。僕が感銘を受けたのは康有為についてだった。康は20世紀の頭に国境をなくせと唱えたという。今TPPに揺れている日本でも読まれるべき本だ。2011/09/18
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- 和書
- 去り際の美学