内容説明
蛮社の獄で渡辺崋山、高野長英を自殺に追い込み、町奉行・矢部定謙の失脚に暗躍するなど、陰謀家として知られる鳥居耀蔵。天保の改革をすすめる老中・水野忠邦の権力を背に、目付・町奉行・勘定奉行として辣腕を揮った稀代の悪党。後半生を二十三年に及ぶ丸亀での幽囚のうちに送り、明治を迎えるまでのその七十八年の生涯。
目次
天保の改革と鳥居耀蔵
天保の改革の中身
水野越前守の登場
蛮社の獄
矢部定謙追放の陰謀
鳥居甲斐とその一派の審問
渋川六蔵・後藤三右衛門の審問と判決
鳥居甲斐の審問と供述
幽囚二十三年
著者等紹介
松岡英夫[マツオカヒデオ]
1912年、新潟市に生まれる。38年、東京帝国大学文学部社会学科卒。毎日新聞政治部長、論説委員、編集局顧問を歴任。政治評論家、歴史家。2001年死去。主な著書に、『人権擁護六十年』『大久保一翁』(毎日出版文化賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
43
吉良上野介や田沼意次と並び、幕末に“妖怪”とまでいわれた鳥居耀蔵の悪辣ぶりを当時の文書から明らかにするノンフィクション。「恐るべき陰謀家であり、執念深い復讐者であり、政敵打倒のためには手段を選ばぬ行動者」であった耀藏は、自分を引き立てた老中水野忠邦さえもある日突然裏切るという、まあ見事な悪党でした。幕閣で6年間働いたあと、23年間丸亀藩に預けられ(宮部みゆき『孤宿の人』の加賀殿のモデルが耀藏らしい)明治まで生きた妖怪の、悪にまみれた小説をぜひ読みたいものです。2023/03/16
№9
22
筆者が言うように鳥居耀蔵は「悪人」ではなく、悪党だ。そのやり口は徹底して陰湿酷薄で手段を選ばず政敵を陥し入れ、蘭学・洋学の先進的・開明的な人々を追い詰める。自身で手を下すことはないが、多くの人々が自死に追いやられ行く末を絶望の淵に追いやられた。しかし、いいように利用した手下どもからその手口が漏れ、最後は逆に裁かれる。嫌われ者世に憚るの例えどおり、23年の幽囚の身のまま明治の世まで生き続ける。表紙のイラストがなんだか三流時代小説本のようで引くが、中身は詳細に鳥居耀蔵の所業を追いその人物像を浮かびあがらせる。2016/03/12
スー
19
18幕末の悪者三本の指に入るだろう鳥居耀蔵。嫌われ者にもそれなりに言い分があるだろうし深い想いがあってやっただろうから本を読めば理解でき好きになれるのかな?と思いながら読んでみたけど駄目でした、やっぱり好きになれなかった。小さな事を集め罪をでっち上げる事までして人を貶める事までした鳥居耀蔵だけど最後は自分の仲間達の証言で失脚したのに胸がスッとした、因果応報。2023/02/17
サケ太
18
“悪党”鳥居耀蔵。“妖怪”とあだ名された男の人生、そして彼がその人生の中で陥れた人物たちについても描かれている。英特の人物と評された彼は陰険な手段を多く用いていた。何故彼は成り上がったのか。彼を起用した水野忠邦、鳥居に仕えた人物たちも興味深い。流罪と成りながらも、生き続け、明治の世を見ることとなった男。恐ろしいが、面白い男だったのは間違いないと思う。2019/02/05
サケ太
11
“悪党”鳥居耀蔵。“妖怪”とあだ名された男の人生、そして彼がその人生の中で陥れた人物たちについても描かれている。英特の人物と評された彼は陰険な手段を多く用いていた。何故彼は成り上がったのか。彼を起用した水野忠邦、鳥居に仕えた人物たちも興味深い。流罪と成りながらも、生き続け、明治の世を見ることとなった男。恐ろしいが、面白い男だったのは間違いないと思う。2019/02/05