出版社内容情報
犬は人なり。数を少なく質をよく、一人一犬を原則とするのが愛犬家心得のひとつである(川端康成「わが犬の記」「愛犬家心得」より)。名犬、番犬、野良犬と暮らした作家達の幻の随筆集。
内容説明
ときに人に寄り添い、あるときは深い印象を残して通り過ぎていった名犬、番犬、野良犬たち。彼らと出会い、心動かされた作家たちの幻の随筆集が、クラフト・エヴィング商會のもとで生まれかわりました。新章「ゆっくり犬の冒険―距離を置くの巻」も併録。人と動物の確かな息づかいが感じられる秀作。
目次
赤毛の犬(阿部知二)
犬たち(網野菊)
犬と私(伊藤整)
わが犬の記愛犬家心得(川端康成)
あか(幸田文)
クマ雪の遠足(志賀直哉)
トム公の居候(徳川無聲)
「犬の家」の主人と家族(長谷川如是閑)
犬(林芙美子)
ゆっくり犬の冒険―距離を置くの巻(クラフト・エヴィング商會)
著者等紹介
川端康成[カワバタヤスナリ]
1899~1972。小説家。ノーベル文学賞受賞
幸田文[コウダアヤ]
1904~1990。小説家、随筆家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
103
犬に関するアンソロジーで初出は昭和29年で、当時の文豪たちの犬に関する小品が収められています。それをクラフト・エヴィング商会の方が1作品を追加して中公文庫で出されました。長谷川如是閑の作品もあり珍しく感じました。それにしても昔は野良犬が結構いたということですが今は全然見当たりません。犬に対する愛情が表れている作品が多い気がしました。同じような作品集の「猫」も読もうと思っています。2024/02/02
アキ
88
クラフト.エビング商會プレゼン「猫」に続いて「犬」も読了。本書は商會での犬派代表、吉田篤弘が担当した。阿部知二、網野菊、伊藤整、川端康成、幸田文、志賀直哉、徳川夢聲、長谷川如是閑、林芙美子の9人の犬にまつわる文章が載る。しぶいセレクトである。最後に吉田氏の「ゆっくり犬の冒険」で終える。「人間の飼い主への愛情は全く没我的であって、犬という動物は人間から愛されるために生き、人間を愛するために生きていると言ってもいいのであろう」川端康成。全くその通り。
小梅
85
犬を放し飼いにしていた昔の感じが良いですね〜2016/11/04
佐島楓
67
川端康成だけ必要があって再読。このひとは手放しの愛情というものを与える対象を探して探していたのだろうか。ついに見つけられなかったのか。小説とは異なる堅い文章が武装のように見えた。2019/02/04
キジネコ
41
クラフト社の「猫」を以前に読みました。大変楽しい読書で その際「犬」もあることを知り機会があればと思っていました。昭和のはじめ頃に活躍された大家達の気持ちの良い文章9篇。大仰で難解なテーマに向き合う意気込みなどは一切なく、いかにも無防備に犬への愛と犬がいる暮らしぶりが描かれています。風景や犬の仕草、大家達の犬に向けた視線、その場の空気まで見える様です。そこにある素のままに語られる言葉を通じて知る本分。大満足の一冊。「こどもにわからないことを話して笑うおとなはじれったいものだ」倖田文さんの「あか」を一番に。2014/10/20