中公文庫<br> 少将滋幹の母

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中公文庫
少将滋幹の母

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  • サイズ 文庫判/ページ数 201p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784122046641
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

内容説明

左大臣時平のおもわれ人となった北の方は年老いた夫や幼い子と引き離され、宮中奥深くに囲われてしまう。母を恋い慕う幼い滋幹は母の情人がしたためた恋文を自らの腕にかくし、母の元に通う。平安文学に材をとった谷崎文学の代表作。小倉遊亀による挿画を完全収載。

著者等紹介

谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
明治19年(1886)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝大国文科に入学するも、のち中退。明治43年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和40年7月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和24年には、第八回文化勲章を受けた。昭和39年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よこたん

57
“彼に取って「母」と云うものは、五つの時にちらりとみかけた涙を湛えた顔の記憶と、あのかぐわしい薫物の匂の感覚とに過ぎなかった。” 一番かなしい人は誰なの?、と思う。夫や幼子と突然引き離された北の方? 巧妙なやり口で権力者に妻を譲らされた年老いた夫? 母を取り上げられた幼子? 表には出さない女の心は如何に。おそらく、それぞれの思いは同じ方向には向いていないのだろう。つらつらと美しく、時に残酷でグロテスクにも語られる文章がおそろしく読み易く、小倉遊亀のやわらかで雅な挿絵がふんだんに盛り込まれた贅沢な一冊。2021/01/30

ひなきち

16
読みやすく、あっという間に読み終えた。小倉遊亀氏の挿絵と相まって、まるで雅な王朝絵巻物を俯瞰しているよう…。しかしマゾヒズムはちゃんと顕在していた。滋幹の母は、歴史上著名な男たちを(自覚なしで)次々に迷走させたが、一番の被害者は、そんなファムファタールを母親に持った滋幹だと思う。彼は果たしてどんな生活を歩んだのか。どんな女性を妻にしたのか。また、当の本人である滋幹の母はいったい何を考えていたのか…。解説を読み、この小説には谷崎氏自身が反映されていたことにも納得…てか、えええっ?!2016/08/01

H2A

12
好色漢の平中が恋に翻弄される逸話から始まり、時の権力者の藤原時平が、平中から聞いた老大納言国経の年若い妻の北の方を奪う。はるか時が経って国経の長子の滋幹が老いた母に再会するという話。母についての幼児の幽かな記憶(平中と和歌を取り交わした仔細は特に)、父国経が夜毎に屍体捨場を彷徨い仏法による救いを求め懊悩する姿は、前半の史実部分とすんなりつながっていて、美醜一体となった作品世界をまざまざと脳裏に灼きつける。桜の下でひしと抱き合う姿は感涙もの。見開きごとにある小倉遊亀の挿画も谷崎の世界を引き立てる。2016/01/31

mstr_kk

9
文章の読みやすさが驚異的で、古典の世界を扱っているのに、現代作家より馴染みやすかったです。ぶっ飛んだ内容もあいまって、こんなに砕けていいの? という気もします(今読むと、町田康みたいなところも)。面白く、すごいスピードで読めました。古典を引用しながらの評論的な文章が小説になる仕掛けが興味深く、いちいちエピソードが立っています。ただ、谷崎の中ではそんなに「好き」ではないかもしれません。あまりに文章に抵抗感がなさすぎて、『蘆刈』とかを読んだときのような震えるほどの享楽はなかったような。2016/03/08

ほたぴょん

5
時平が国経の妻をやや強引に譲り受けるくだり、どうしたって佐藤春夫との細君譲渡事件を思い出さすにはいられないが、歴史に仮託したモデル小説ではない。譲る側の心理の描き方に、本歌取りのように事件の影を透かして見る程度が適当か。全部書き上げてから新聞に連載したという事情もあるようだが、全ての筋書が見えているといわんばかりの悠々とした語り口が印象的で、王朝説話の世界を現代文学として蘇らせるのに一役かっている。王朝説話の世界を舞台に、ということで言えば、芥川的な書きぶりへのアンサーという側面もあったのではないか。2025/05/25

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