内容説明
源氏物語はどのような世界から生まれたのか。藤原道長はどんな布石によって天皇家外戚の地位を完成したのか。洗練の極みを誇りながら権勢の争いに明け暮れた平安貴族の生活と思想を、御堂関白記・小右記などの史料を駆使して鮮かに浮き彫りにする。
目次
源氏物語の世界
安和の変
道長の出現
家族と外戚
身分と昇進
中宮彰子
一条天皇の宮廷
清少納言と紫式部
儀式の世界
日記を書く人々〔ほか〕
著者等紹介
土田直鎮[ツチダナオシゲ]
大正13年(1924)、東京に生まれる。昭和24年、東京大学文学部国史学科卒業後、同大史料編纂所に入り、平安時代の史料編纂と刊行に努める。同所教授、同大文学部教授を歴任し、昭和50年から52年まで国立歴史民俗博物館長に就任。東京大学名誉教授。平成5年、逝去
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感想・レビュー
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(haro-n)
78
平安中期、藤原道長の時代の貴族社会の様子を説明。後の解説によると、正確な史料に基づいている訳ではない記述がいくつかあるようだが、時代の雰囲気や大まかな社会の仕組みを知るには充分楽しめる。外戚関係の重要性を、当時の母系社会としての婚姻関係の実態と共に説明していて分かりやすかった。怨霊や祟りを恐れて刑罰が弛かったり、政務は中身より慣例にしたがった儀式を偏重したりと、貴族の政治は兎に角甘い。王朝国家体制が徐々に崩壊し、地方の有力者や武士が勢いをつけていったのも、貴族には為す術もなかったのだろう、と理解できた。2019/03/04
KAZOO
42
このような本にしてはかなり読みやすい部類に入るのでしょう。というのはよく知っている人物や作品が出てくるからです。藤原道長の生涯を追う様な感じで、その人物を取り巻く人々や生活、政治などを、文学作品の源氏物語、紫式部日記、枕草子、更級日記などを絡めてわかりやすくえがいてくれています。2015/04/21
てつ
40
いろいろと内部紛争はありつつもとりあえず平和だった時代。藤原氏のイメージが少し変わった。摂関政治の意味を少し勘違いしていたようだ。2020/10/02
クラムボン
26
この巻は藤原道長が三代の天皇に娘を次々と入内させ、同時に三后(太皇太后、皇太后、中宮)の父となった、まさに栄華の軌跡を辿って往く話。歴史と言うよりは物語を読んでいるようです。当時の文学・物語・日記を頻繁に引用するのも大きい。この時期の歴史書は無いので、歴史物語の「栄花物語・大鏡」が資料となるが虚飾が多いようだ。代わって歴史家が重視するのが公卿の日記。公用を記すのが目的なので、嘘は無いそうだ。「御堂関白記・小右記」などから丹念に真実を掘り起こす。そして「源氏物語」を頻繁に引くことで、王朝文化も見えてきます。2022/03/03
umeko
16
非常に読みやすかった。才もある上に運も味方につけることができた道長と、一条天皇や実資との人間関係が、手に取るように感じられ面白かった。それにしても、儀式を滞りなく行うためのカンニングペパーですか。そこが知りたかったと思えるような、現実味のある内容み魅了されて、あっという間に読了。2016/06/19