内容説明
狐に化かされた、大入道に出くわした、河童の写真を撮った…ほんの数十年前まで、多くの日本人がそれら「妖怪めいたもの」の存在を信じ、その体験を語り継いでいた。妖怪たちはなぜ、かくも長い年月にわたって普遍的な存在たりえたのか。広範な資料から日本の妖怪譚を収集し、その謎を探る。上巻には、路上、家、川、山などに現れる妖怪およびロクロッ道・一つ目小僧ら「ぶきみな化け物」、狐狸や猫、蝦蟇など「動物の怪」を収録。索引付。
目次
第1章 路上に出没する妖怪
第2章 家の中の化け物
第3章 河童
第4章 山童とその他の童怪
第5章 ぶきみな化け物
第6章 ユーモラスなケモノたち
第7章 恐ろしい動物の怪
著者等紹介
今野円輔[コンノエンスケ]
1914年福島県生まれ。1941年慶応義塾大学文学部国文学科(民俗学専攻)卒業。佐藤信彦、折口信夫から民俗学の手ほどきを受けるとともに、柳田国男に師事。毎日新聞社に勤務しつつ、民俗学研究所理事、日本民俗学会評議員などを歴任。1982年没
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感想・レビュー
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F
23
広範な資料から怪異・妖怪譚を収集しその謎に迫った妖怪好き必読の名著。1981年に現代教養文庫から刊行されたものを上下二分冊したもの。上巻には「路上に出没する妖怪」、「家の中の化物」、「河童」、「山童とその他の怪童」、「不気味な化け物」、「ユーモラスなケモノたち」、「恐ろしい動物の怪」までの7章を収録。著者は、妖怪資料の山から、そこに定型があることを認め、定型に導いた要素こそが「日本人の民間信仰であり、神霊に対する強烈な畏怖」だと見出だした。なるほど畏れの形・妖怪を通して日本人の信仰の形が仄見えた気がした。2011/11/22
おおかみ
14
著者は柳田國男に師事した民俗学者でありながら、毎日新聞社にも勤務した人物。本書でも、著者の津々浦々の口碑を集める手腕を垣間見ることができる。上巻では狐狸や河童、座敷童子などの怪異譚が中心となる。それぞれ出典が明記されているのみならず地名などの具体的な情報が載っているものも多く、分布や土地柄について分析することも可能。資料として貴重であろう。2011/07/19
佐島楓
12
これも確か京極夏彦さんおすすめ本。地名とか人名の固有名詞が出てくるので妙な怖さがある。笑ってしまうものもあるけれど。2012/06/03
クリ
4
「山のあなたはもう知らぬ他国であった」(「はじめに」より。写真にはありませんが帯に引用されています)引きつけられる言葉です。「あなた」は「古語辞典」によると「向こう」とか「彼方」の意だそうです。2017/03/29
みりん
1
全国の妖怪にまつわる伝承をまとめた本です。 各地方に伝わるままの形を載せているので、 同じ妖怪の話でも、地方によって微妙にその特徴が 違っていたりして、とても面白いです。 また、完全に妖怪というものを肯定したのでも、 否定した書き方でもなく、 中には「~と見間違えたのだろう」、などの 多少の解釈も交えつつ、まとめてあります。 各説話も1ページにも満たないものばかりなので とても読みやすいです。 興味のある方は、下巻も合わせて是非どうぞ。2006/12/07