内容説明
わたしたちがなにげなく仰ぎ見る星空に、天文学者たちは「自分の星」をもっている。ある時はそれと静かな対話を楽しみ、またある時はそれと戦う。観測の合間にかわされる会話や、天文台を訪ねる人々とのふれあい―興味深いエピソードをちりばめて、岡山天体物理観測所で副所長を勤め、星と対話を続けた著者が記す。天文台職員たちの生活をうかがい知ることができる好著。
目次
一月(元日;セレスの発見 ほか)
二月(光のすじの向こうの端の…;小宇宙 ほか)
三月(ドラムスコ;天文観測心得 ほか)
四月(モズラ;ワラビ採り)
五月(モズのひな;カーリュー・リヴァー ほか)
六月(メッキ作業;星の世界へ ほか)
七月~八月(台風襲来;ハギハラ・テレスコープ ほか)
九月(ドーム修理;ベーキング)
十月(初スバル;フラワー・カード ほか)
十一月(コリメーター;畑中忌 ほか)
十二月(リック天文台;ベテルギウス ほか)
著者等紹介
石田五郎[イシダゴロウ]
1924(大正13)年、東京生まれ。東京帝国大学理学部天文学科卒。1949年東京大学助手、1964年助教授、1984年教授を歴任し、同年4月退官。この間、三鷹天文台に1年、麻布狸穴の天文学教室に9年、岡山天体物理観測所に24年を過す。1986年東洋大学教授に就任。1992年没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
65
日記が好きな人や日記を書いている人におすすめの本になっている。日記好きなら多分ハマる本だと思う。著者の石田さんは岡山にある観測所の副所長として活躍された方である。そんな石田さんが1970年代のどこか1年間を日記として綴っている。日記書く人ならあるあるの話が書いてある気がする。例えば書き始めた1月1日はめっちゃ長文なのに少しずつ量が減ってしまう。毎日書いていない。書くことが少ない日は露骨に文章が短い。などなど。面白い部分も多くありぜひよんでほしい本になっている!2023/09/02
あんこ
36
天文台日記という単語から、孤独なものを想像していたのだけど違いました。研究のための天体観測を書き起こしたものから、天文台での人々とのふれあいなど、様々。専門的な部分は分からないながらも、石田五郎先生の日記から醸し出される静謐な雰囲気。美しくて魅力的。『深夜喫茶』でレコードを流しながら一休みするところが印象的でした。また、天体観測と岡山というところから、小川洋子さんの『ミーナの行進』に描かれた彗星観察の夜を思い出しました。2014/11/19
Tui
20
今はなき松丸本舗で、装丁のシンプルな美しさに一目惚れした。岡山県のとある天文台に勤務する学者の日記。空を見上げ、外部から訪れる望遠鏡利用者のために観測の手筈を整え、雲がかかったら(快曇・かいどん、と言うそうな)深夜喫茶と名づけた控え室でひたすら待機。長閑なようだが、昼夜は逆転し、装置を万全に整え、観測時には寒い中露光を続けなければならない。時は本四架橋がまだ計画中の頃。人力に頼る要素が大きかった時代の天文台の姿は、ノスタルジックだ。出版から30年後の様子を記したあとがきが、そして美しい余韻を残す。2015/11/17
三平
18
1970年当時、東洋一の望遠鏡を備えていた岡山天体観測所での1年の日々を綴ったもの。 星を追い求めるひとびとが日本各地、そして世界からここを訪れる。 星を見る為には考えたら当たり前なのだが、彼らの生活は夜を中心とし、夜明けと共に終える。 静かに観測するだけでない。アナログな機械や重くなる瞼と格闘するのもこの仕事。疲れた時には夜の底の憩いの「深夜喫茶」でレコードを聴きながら一休み。天文の難しい知識も散りばめつつ読んでいて楽しく、日記文学としても豊かで深い名著。2019/08/06
かもすぱ
16
1970年代、当時日本の最新鋭だった岡山の天文台の1年間を綴った日記。本書の日付は1月1日からつけられているが、読み始めると実のところ12月31日30時から始まっていることが判明し、一気に天文屋の夜と昼の世界に引き込まれるのがいい。巨大な望遠鏡をがちゃがちゃぐわっと動かすスチームパンクみたいなメカメカしさも堪能した。待機と集中の連続する天体観測の平凡で風雅な生活、非常に面白かったです。おすすめ2017/07/31
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