内容説明
絶対の孤独と漂泊に生きた“捨聖”一遍上人と、彼ら終生つき従った尼僧の超一。『一遍聖絵』に描かれた彼らの姿と内なる対話を繰り返しながら、無限の自由を求めてさまよう、京都の老舗旅館の女将・美緒の心の旅。谷崎潤一郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
織沢
4
谷崎賞三作目。主人公の女性、四国で出会った若い僧 智信、主人公の愛人 亮介ら現代の人々と一遍、超一ら中世の人々がそれぞれ旅をし、彼らの感覚感情が重なり合う。最後の解説で少し触れられているように作者瀬戸内寂聴自身もその重なりに加わっているのだろうし、読者である我々も自ずと精神の旅に出る事になる。 私も主人公と或いは一遍上人と旅に出た。彼らはその旅の道中で全てを捨て放つと決めた。それは旅を続けるためなのかもしれない。2019/04/03
格
1
語り手の美緒は母の死後、その情夫である亮介と関係を持ち、彼の影響で一遍に傾倒していく。美緒自身の人生と、彼女が出会った若き僧智信のインド放浪、そして聖絵から読み取られる一遍の遊行がこの小説を構成している。一切を捨てるということは、人の情をも断ち切ることだろうか。智信は女の情から逃れてインドに旅立ち、そこでも女から逃れられないでいる。一遍に附き従った尼僧、超一も来世での一遍との再会を願っている。そもそも、美緒と一遍との関わりも、間に亮介の情が挟まっている→2024/05/12
Shuichi Kawakami
1
主人公の女性を取り巻く人間模様と彼女の心情を繊細に描いています。そして、鎌倉時代の僧・一遍上人が描かれる聖絵の中での一遍の生き様が、登場人物とシンクロしていく様。奥深く、読み応えある一冊でした。2019/02/04
Peony Bacchus
0
宗教的な情報のところは読みにくくてわからないところもたくさんありました。超一の一途なところが染みる。2015/03/20
赤坂サラザン
0
一遍上人の遊行の様子が描かれた聖絵。いつしかそれを自身の半生になぞらえ回顧していく妙齢の女性。幾つかの思わせぶりな物語が折り重なり、新境地へと誘っていく構成力は見事です。仏門に身を置く著者ならではの、アカデミックで艶やかな大人の恋愛小説でしたが、読者は一定以上の世代の方に限られてしまいそうです。2013/07/18