内容説明
「野蛮の勃興こそ歴史の跳躍台である」。文明が衰退した明とそれに挑戦する女真との間に激しい攻防戦が始まった。世界史を切り開く動乱に翻弄される韃靼公主アビアと平戸武士桂庄助を中心として様々な人間が織りなす壮大な歴史ロマン。第15回大仏次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
105
世界史が語られていく中での激しい動乱を見ることができたと思います。王朝の変遷のうねりと共に描かれる人間ドラマ。ロマンスはいつしか重厚感あふれる物語へと変遷している。鎖国のために帰国できなくなった庄助と、彼を取り巻く人間模様、そして歴史が彩る世界。それは時代に翻弄された庄助とアビアの運命の物語でもあったのですね。架空の人物が主人公とはいえ、歴史小説としての重みは読み応えがあります。韃靼が遠い国になったときの想いはどんなだったのでしょうね。2017/07/21
遥かなる想い
84
下巻は明と清との攻防戦から始まる。 清勃興期のホンタイジ・ドルゴンの時代が新鮮で面白い。 明帝国の滅亡と清の台頭…アビア公主と桂庄助の 恋がわきにやられるほど、中国の皇帝の描写は 巧みで著者らしい。 あまり知らなかった漢族から女真族への政権交代が 今に蘇る…大変有意な物語だった。2025/06/20
カピバラKS
84
●下巻は中国における明から清への王朝交代を群像劇として描く。本書は司馬最後の長編小説となったが、作話を事実と織り交ぜ、フィクションをルポルタージュに魅せる神筆には、いささかの衰えも感じられなかった。●さて、大国の明は重税などによって民心を失い、流賊が横行し世は乱れる。流賊の大頭目である李自成は、租税免除などを唱えて大衆煽動を図るが、これを鄭成功は「英雄よく人をあざむく」ものと指摘する。●このあたり、令和初頭の日本人として耳が痛く、苦笑せざるを得なかった。2025/01/15
キムチ
61
流せない記述が多く、読むのに骨が折れた・・面白すぎて。作家あまたあれど、ある意味、筆者の様な個性を持った方は不世出かも。更に、絶筆というからエンディングも何かしら味わいがある。あとがきに変えての「女真人、来たり去る」なぞ、エッセーとして秀逸。「騎馬民族という世界は英雄が出ないと≪縫い糸を取った着物≫とは言い得て妙。庄助もアビアの筆者が作った架空の人物なれど、ラストでは独り歩きしている感じ。滅満興漢の激しさを語る箇所は興味深々、単一民族と称する日本では想像だにできぬ世界。これも含め、教養になる読書だった。 2018/05/06
金吾
60
○やはり面白かったです。清の勃興がよく伝わってきます。主人公は数奇な運命をたどった架空の人物ですが、ロマンと逡巡もあり良かったです。ラストは少しジーンとしました。2022/03/14