感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
amanon
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何となく倉橋由美子の後記短篇を思わせる人間の暗部を抉り出すような皮肉めいたユーモアが印象的。それと家族に疎んじられた孤独な老婆と世間での嫌われ者である鴉が心を通わせるという設定がある意味微笑ましい。そして各話に盛り込まれた初出当時の世相やエピソードに昭和が遠くなったということを改めて思い知らされる。それと同時に古希を迎えてもなお世相に対して、鋭い視線を投げかけ続ける著者の姿勢に少なからず感嘆させられる。また最終話の投身自殺をはかろうとする老婆を鴉が必死に止めようとする場面にはハラハラさせられた。2013/02/13