感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
27
青丹よし奈良の都。唐から戒律を伝えるために鑑真が招聘された。十年にわたるその不屈の渡海は井上靖の「天平の甍」であまりにも有名だ。しかし鑑真は大歓迎されたわけではなかった。日本の仏教界は戒律の重要性が理解できない。それは鎮護国家の法たる奈良仏教の位置づけに原因がある。仏教は国家に奉仕するものなのか?鑑真に従う唐僧たちの戸惑い。表面だけではわからない事実。僧侶を国家公務員に見立て、現在と変わらぬ官尊民卑の王朝の歴史を描く視点が鮮やかだ。聖武天皇、光明皇后、藤原仲麻呂の関係も非常に微妙で興味深い。下巻へ続く。2014/10/05
こぽぞう☆
20
図書館本。鑑真来日から、光仁天皇の頃まで、のこれは小説?なんだろうか。小説っぽいのは10%くらいな気が。永井さん、かなりな量の文献(古文書からお経から)を漁って書かれたようだ。聖武天皇、光明皇后、孝謙称徳天皇、藤原仲麻呂、鑑真、妙法、人物像は小説なんだが、裏の取り方が半端ない。2019/07/07
RASCAL
19
古代史を題材に歴史小説を書く人って少ないですよね。永井路子さんと黒岩重吾さんくらい。今回の永井さんのこれですが、時代的は8世紀後半、「美貌の女帝」元正天皇の後の時代。主人公が誰だかわかりにくいのですが、鑑真と藤原仲麻呂を中心に話は進んでいきます。権謀術策の政治家と世俗離れをした宗教家、対照的なふたり。孝謙女帝を手玉に取って絶頂の仲麻呂、でもこれから下巻で転落ですよね。やはり永井さんは女性を主人公にしたときの方がうまいかな。2014/06/14
リードシクティス
17
再読。先日読んだ『美貌の女帝』の直後、聖武天皇、そして孝謙女帝の治世。日本に戒律を伝えるために渡来した鑑真ら唐僧たちと、巧みな政治力で権力の階段を駆け上がる藤原仲麻呂を中心に、権謀うず巻く奈良時代を描く。筆舌に尽くしがたい苦難の末に戒律を伝えた鑑真一行に対して、その本質を脇に置いたまま単に政治の道具として利用する日本の貴族たちの姿が、遠藤周作作品におけるキリスト教を彷彿とさせて日本人のある一面を示しているように思えた。そしてなんといっても孝謙女帝を意のままに操り権力を手にしていく藤原仲麻呂の才覚が際立つ。2018/01/10
タカボー
16
「美貌の女帝」元正天皇の後に続く物語。鑑真の来日、藤原仲麻呂の台頭、聖武天皇の崩御、孝謙天皇の即位。永井路子さんにしては珍しく読みにくい。史料の解釈がほとんどで、それだけ歴史小説として書くには難しい時代なんだな、って思う。ローマ人の物語の第1巻を読んだ感覚に近い。さすが不比等の孫、仲麻呂の頭と手際の良さが際立つ。鑑真の招聘とその後の扱いにまで政治的意図が見える。上巻は唐招提寺の開基まで。本編に関係ないけど、皇族の名前が長屋王、安宿王、塩焼王ってなんか庶民的。もっと神々しい名前にすればいいのに。2021/04/25