感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澤水月
5
芥川妻の晩年6年に亘る語り。養子の悲哀、その妻は…夫の死後も養父母・伯母と住み世話全うしつつ育児。語られる姿は臨場感豊か。震災時子供置き逃げる、何かと自死試み(妻の親友巻き込み心中騒動!)。結婚僅か十年、28で遺され40年…終盤、夫の女性関係に触れる下りが余りに恐ろしいが凛として。葬儀に皆!来たり子供が同じ小学校でマウント取られたり!死後未知の女性が結婚直後のラブレター売ろうとしにくる(コメ参照)。実母の狂死事情は芥川の長姉亡くし狐ばかり描くようになったと哀感豊か。自死すぐに失禁ないと確かめる気遣い沁みる2024/01/25
おぎゃ
4
ああ大変だった。文夫人が生前の芥川の思い出を語った本。もらった恋文を見ながらの「手紙も創作の一部だったかもしれない」という言葉に絶句。でも芥川を「まったく信頼していた」という。神経質で病気ばかりしていて、そのくせ他の女の影もちらつかせる奴なのに。なぜだろう?2018/12/16
東京湾
3
龍之介の妻・芥川文が追想する、十年間の結婚生活。芸術熱心で伯母思いな芥川龍之介の素顔が、波乱の年月を経た穏やかな語り口から浮かび上がる。特に興味深かったのは晩年の姿。誰よりも近くで龍之介の憔悴を見つめていた文の証言は痛切だった。2022/10/28
つんこ
3
芥川の妻文子の晩年5年間に、自宅に通って聞き書きしたもの。家庭での芥川がよくわかる。震災が起きて、子供達を放って自分だけ逃げるところは予想通りだったけれど、直後に食いっぱぐれぬよう野菜を大八車で調達する機動力は意外。神経からくる胃腸炎さえなければ、あるいは幸せな家庭を維持できたのかもしれない。祓っても祓いきれない死(自殺すること)の影。小説に自殺に道連れにする女性のことなど書いたりしてはいるが、正真正銘愛妻家だったんだろう。「主人の手紙(ラブレター)も創作の一部であったかもしれないと思ったりします。」2017/08/31