中公文庫<br> 中世の秋 〈上巻〉

中公文庫
中世の秋 〈上巻〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 389p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122003729
  • NDC分類 230.4
  • Cコード C1122

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

30
一度は読んでおきたい名著という期待を持って読みはじめたが、私にとってあまりなじみのない世界を、様々なエピソードの積み重ねで紹介する書き方になかなか興が乗らなかった。翻訳も、ちょっと引っ掛かる箇所が見受けられる。が、騎士道や騎士団の話以降、ホイジンガと私の温度差が徐々になくなっていき、中世の世界を少しずつ覗いているような気にさせてくれた。女性を敬ったり諭したり攻撃したりする男性の態度は、基本的には現代とほとんど変わらないがよりあけすけであったであろうこと、あけすけなのは身分の違いに対しても同様であったこと。2017/03/23

SY

3
浅田彰と嶋田雅彦の対談集「天使が通る」で二人がダンテについて論じた折、浅田氏は12世紀プロヴァンスのトゥルバドゥールの詩が散ってダンテの清新体なる文学運動に連なると述べているが、同じ知見が本書の第8章に見られる。かつて男女の愛が吟われるとき、結ばれた恋人が死によって引き裂かれるのがモチーフだったが、12世紀に初めて「叶わぬ恋」が主題となったのだ。私たちにとって当然の概念にも発生と原初形態がある。愛は12世紀の発明品なのだ。本書は我々の常識の相対化を図るのに格好の書である。2017/04/22

Tatsuhiko

3
学術書というよりは歴史家によるフランドル・フランス地域の末期中世についてのエッセイといった感じ。名著の誉れに違わない豊かな学識と鋭利な批評眼に裏打ちされたエレガントな文章で、非常に贅沢な読書体験をさせてもらった。とかく聖俗について極端な評価になりやすいヨーロッパ中世世界だが、この本によればじっさいそれは極端な世界だったのだ。そこに生きた人々の営為を思い浮かべる上で、本書は素晴らしい手助けをしてくれる。下巻も読むのが楽しみです。2015/10/17

れぽれろ

3
14~15世紀(中世末期)の西欧についての考察。中世的なものが飽和した状態にあったこの時代、宗教的・美的に美しい生活を求める心持ちが礼儀作法を極端に重んずる形式主義を生み、ロマンティシズムとエロティシズムが混在した独特の騎士道精神を生みます。人々は気性激しく、民衆は聖職者に扇動され、残酷な処刑に喝采を送る。生活の隅々にまでキリスト教が行き渡った結果本来の聖性が欠落し、宗教が俗なるイメージに塗れ、死のイメージが生活に溢れます。中世末期とルネサンス・宗教改革の時代との継続性を考えながら楽しく読みました。2014/02/02

彩菜

2
中世の不安な時代に暮らす人々はより美しい生活に憧れた。だが社会国家を改良し改革しようとする志向が未だ知られていなかった為、生活そのものを美でもって高め、遊びとかたちで満たそうとした。この上に騎士道や愛の様々な作法や形式が花開く。中世世界は「恋する英雄」や「羊飼いの牧歌」的世界のイメージを生活の上に具体的に描き出そうとしたんだなあ、という辺りで前半終了。この生活「ごっこ遊び(羊飼いごっこ、のような)」みたいで楽しそうだけどお金がいくらあっても足りなそう。2018/07/05

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