中公文庫<br> 死者の書

中公文庫
死者の書

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  • サイズ 文庫判/ページ数 203p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122000964
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

45
した した したと水音の響く、凍りつくような暗闇での「彼の人」の目覚めとともに、一気に古代の二神山の麓へと連れて行かれてしまいます。死者の眠りから覚めた彼の人、大津皇子の心に浮かぶのは最期の時に唯ひと目見た女性。彼女の後裔の美しい郎女への目覚めた皇子の執心と、唐の文化や制度を吸収して変わってゆく時代、古来からの枠組みが古びてゆく時代への大伴家持の鬱屈、駘蕩とした恵美押勝の欲望、そんなものが織りなす物語の影で、山越しに見た「俤びと」を一途に素直に思う郎女からこの物語の美しさが匂い出ているようだと思いました。2017/09/06

えも

19
蔵書の再読■殺された大津皇子の魂が二上山の棺から蘇り藤原の郎女と交感する、折口信夫の傑作■死者の畏ろしさと古代の長閑さが、硬質かつ雅な文体で語られ、一気にいにしへの彼方へと連れ去られた。旧かな遣ひがまた心地良いと云ふもの。2014/05/22

しおつう

12
アヌビスとファラオのこの表紙絵を見るかぎり、間違いなくエジプトの死者の書を想像する。蓋を開けると日本の古典小説だった。せっかく図書館で借りたので読んでみたが、旧仮名遣いで読みにくいことこの上なし。それでも冒頭の死者が甦るシーンは臨場感溢れる出だしだったが、以後は大伴家持の時代の古典小説。何よりも何故こんな古い本(続編かもしれない)が一瞬とはいえ読者メーターのランキングに載ったのかが不思議。2015/03/01

Gotoran

11
小林秀雄著書(『モオツァルト・無常という事』-偶像崇拝)繋がりで本書を読んだ。民族学・国文学に長けた著者が、当麻寺(奈良)に伝わる中将姫の蓮糸曼陀羅伝説と大津皇子(天武天皇の皇子)の史実を基に、創り出した藤原南家郎女(中将姫)と大津皇子の切なく、物悲しい物語。古代日本人の魂と死者への憐みの心が幻想的に描かれている。著者の古代人への思いの深さに感嘆した。もう1編の「山越し阿弥陀像の画因」では、著者自らが「死者の書」の創作動機を語っていて、非常に興味深かった。旧仮名遣いで若干読むのに苦労したが、得たもの大。2012/04/07

ダイキ

5
中学生の時に読んだ時は記紀万葉の知識が一切無かったから殆ど内容が解らなかったなぁ。ただ郎女の美しい写経姿だけは凡そ六年後の今日までほのぼのと記憶に漂っていた。併録されている『山越しの阿弥陀像の画因』で述べられている、「日晷(カゲ)を追うてあくがれ歩く女の生活」というのはなつかしい。全集の『古代研究』巻を衝動買いしました。正仮名遣だったのが嬉しい驚き。「この中申し上げた滋賀津彦は、やはり隼別でもおざりました。天若日子でもおざりました。天の日に矢を射かける__併し、極みなく美しいお人でおざりましたがよ」2016/12/16

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