出版社内容情報
『婦人公論』がすごした激動の昭和時代、今なお愛されている名作の多くがこの雑誌を飾った。作品を通してみた23様の作家の人生。
内容説明
90年にわたり、世に多様な生き方を提示してきた『婦人公論』は、同時に文芸欄も賑やかだった。迫るは谷崎潤一郎、松本清張、有吉佐和子ら23人。昭和を生き抜いた作家達、かくありき。
目次
第1章 負ケラレマセン、書クマデハ―激動の戦前編(谷崎潤一郎と「細雪」;林芙美子と「北岸部隊」;佐多稲子と「くれなゐ」 ほか)
第2章 わが人生に悔いなし―崩壊と出発の戦後編1(平林たい子と「小説岡本かの子」「彼女の訪問」;木下順二と「夕鶴」;伊藤整と「女性に関する十二章」 ほか)
第3章 誰がためにペンはある―高度成長をゆく戦後編2(石川達三と「稚くて愛を知らず」;川端康成と「美しさと哀しみと」;三島由紀夫と「音楽」 ほか)
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
作家。1954年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。東京大学新聞研究所修了。出版社勤務を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』(通称・谷根千)を創刊。編集人をつとめるかたわら、環境論、地域文化論、都市論、雑誌論にかかわる執筆、講義等を精力的にこなす。97年、『鴎外の坂』(新潮文庫)で芸術選奨文部大臣新人賞を、03年、『「即興詩人」のイタリア』(講談社)でJTB紀行文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rbyawa
1
i023、ワンマンだった瀧田氏の元で息抜き的な意味で作られ、彼の死後、中央公論の社長を任された嶋中氏の作ったのがこの婦人公論で、まあ確かに他の婦人雑誌と比べてレベルが高いと言われたら事実ではないのかな…。ただ、主に純文学作家ってのはちょっとなぁ…(わりと補佐的に書いてるぽいしね、中央公論に載せられないから載せる的な)。もうちょっと婦人向け布陣も欲しかったかな、要するに『女給』みたいな小説載ってたんだよね…(事件絡みで触れてただけ)。ただ戦後の女性観に関しては思いの外良かったかもな、松本清張はびっくりした。2018/07/08
編集兼発行人
1
我国の名だたる女性誌に掲載された文章の著者達に関する評伝集。戦前の谷崎から戦後の有吉まで二十強に及ぶ著名な作家の著作や人隣について各々が十数頁の分量で平易に紹介するという構成。男女も時代も問わず一癖も二癖も有る人物像から往時の香気あるいは異臭が立ち込め言葉に殉じる業の深さを感受。文学をテキストだけ舐め尽くすのは勿体無く感じる程の刺激的なエピソードが満載であり三島に代表される何処か言い訳がましい男流と平林に顕著である捨身で斬り込むかの如き女流との対照を堪能。室生の簡潔な美文に鰐翁との共通項を発見し頗る合点。2014/11/21
キムチ
1
久しぶりに森さんの文体に触れる。やっぱり、いい。一見突き放した文体でありつつ、深奥をグイっと捕まえている。婦人公論の巻頭を賑わせた作家を嶋中雄作という看板を根底に据えて三期に分け料理している。第三章がわたし的文学へイントロという事もあり、かなり情趣に浸って読んだ。石川達三にはまりまくった事もあり、筆者が分析した内容は多いに納得。水上、有吉、松本氏も大好きだったので、「うんうん」ひとりごち。 戦前の女流作家の解説くだりはなかなか。今でこそ泉下に潜んだものの、「かつて、かくも燃えた女がいた」と感じさせる。2012/10/26
katta
1
☆☆☆☆☆ 今でこそそれほど目立つ出版社じゃないけれど、戦前戦後を通じて中央公論社は偉大な作家を輩出してきた。まして、一段低く見られていた女流にとって婦人公論に書くことは何よりのステイタスだったのだ。文壇とは何か、作家の素顔にも会える良書。2009/02/04
いちはじめ
1
恥ずかしながら、「婦人公論」にこんなにも凄い作家たちが執筆していたとは知らなかった。森まゆみの筆致も良い2007/03/17