出版社内容情報
さまざまな人種ルーツを持った住民たち。その証言にもとづいて活写する「もう一つの戦後日本」。返還前後の事実を伝える貴重な史資料。
内容説明
戦後23年間にわたり米軍に占領された小笠原の住民は、日本人でありながら日本から隔絶された生活を強いられた。その特異な歴史が、島民自らの語りによって、いま初めて明らかになる。
目次
第1章 小笠原の歴史と地理
第2章 昔の話を聞きに
第3章 昭和・戦争に翻弄される小笠原
第4章 アメリカ占領・日本返還
第5章 戦後生まれの子どもたち
終章 エーブルさんの思い出
著者等紹介
山口遼子[ヤマグチリョウコ]
1974年早稲田大学教育学部卒業。小中学校教諭を経て、ノンフィクション・ライターに。女性、夫婦問題、教育、育児などのテーマに多方面で活躍中。日本野鳥の会会員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
wei xian tiang
2
小笠原のコーカソイド住民については気になっていたので、ある程度の参考にはなった本。しかし随所に本筋と関連の薄いアジア史への言及、著者の特殊な歴史認識が鼻に付く。溥儀を満州事変当時の清国皇帝と書いたり、軍閥混戦を清朝の流れをくむ勢力対国民党の戦いと極端すぎる簡略化していたり、十五年戦争論どころか日中戦争を「満州事変をきっかけに始まった」と言い切ったり。南ベトナムがゴ=ディン=ディエムによって初めて独立したかのような記述もおかしい。とにかくおかしな所が多い本。2015/06/22
うたまる
2
二つの意味で残念な本。一つは、全て日本が悪く、アメリカは素晴らしいという著者の偏見がきつい点。戦時中の差別は当然良くはないが、アメリカの日系人は財産没収の上強制収容所送りだよ。どっちがひどい?返還後に言葉の問題で困ったのだって、占領軍が日本領なのに日本語禁止にしたからでしょ。どっちが悪い?事実と評価のアンバランスで、内容全体の信憑性にも疑問を持ってしまう。もう一つは、著者の力量不足。インタビューをほぼそのまま載せているので『小笠原住民の思い出文集』になっている。編集と構成をしないと年代記にならんでしょ。2014/10/23
aldente
2
正直今まで小笠原のことは殆ど何も知らないに等しかった。欧米系の人々が開拓し今でもその血流が受け継がれていること、日本とアメリカの間で揺れ動いた歴史を持つ島であること…勉強になったと共に、どれだけの日本人がそのことを知っているだろうか?と感じた。 また、同時に本書に描かれている小笠原の持つ美しい自然はとても魅力的だった。現代の日本が失いつつあるものがそこにはある気がする。いつかぜひ行ってみたい。2009/11/10
とく
1
小笠原諸島の事を知りたくて購入。『無人島(ぶにんじま)』と呼ばれていた島に人が住み始めたのは19世紀。しかも、それは日本人ではなく西欧人達で、島をボニン(ぶにん)アイランドと呼び暮らし始めた。彼らは日本人となって、その子孫は今でも島で暮らしており(!)、戦前の豊かな生活、太平洋戦争、内地への強制疎開、米国の占領、日本返還を経て現在に至る。本書は西欧と日本の狭間で揺れ続けた小笠原の歴史を、彼ら西欧系島民の取材を基に記す。小笠原には美しい自然だけでなく、日本の何処にもない『歴史』が有ることが分かった。2014/04/20
ayapon
1
帰りのおが丸船内で購入。ツアーでお世話になった「教授」が、「この島で戦争で亡くなった人は殆どいない」と言っていて、硫黄島に近いのになんでだろ?と単純に思い手にとった。 とても詳細な文献の調査、聞き込みはさすがと思った。集団疎開などでの内地との行き来や戦時に差別された日系アメリカ人など、小笠原ならではの歴史は知らないことばかりであった。 二見港出航時のあの盛大なお見送りをしてくれる島の人々は、内地と島を何日もかけて行き来した先祖の思いを受け継いでいるのかな、という気がした。2011/12/09