内容説明
1894年の夏、日清両国が朝鮮の「支配」をめぐり開戦に至った日清戦争。朝鮮から満州を舞台に戦われた近代日本初の国家間戦争である。清の講和受諾によっていったん終わりをみるが、割譲された台湾では、なお泥沼の戦闘が続いた。本書は、開戦の経緯など通説に変更を迫りながら、平壌や旅順の戦いなど、各戦闘を詳述。兵士とほぼ同数の軍夫を動員、虐殺が散見され、前近代戦の様相を見せたこの戦争の全貌を描く。
目次
第1章 戦争前夜の東アジア
第2章 朝鮮への出兵から日清開戦へ
第3章 朝鮮半島の占領
第4章 中国領土内への侵攻
第5章 戦争体験と「国民」の形成
第6章 下関講和条約と台湾侵攻
終章 日清戦争とは何だったのか
著者等紹介
大谷正[オオタニタダシ]
1950(昭和25)年、鳥取県生まれ。大阪大学文学部卒。大阪大学大学院文学研究科博士課程退学、博士(文学)。1982年専修大学法学部講師、助教授、教授を経て、2010年より専修大学文学部歴史学科教授。専攻・日本近代史・メディア史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とくけんちょ
48
名前は知っていたが、よくよく理解していなかった戦争。いつどのように始まって、どのように決着がついたのか。勝った勝ったとは知ってたが。近代日本にどのような影響を与えたのか、規模やその背景についても整理することができた。次は目に見える兵器や服装などのビジュアルで当時を振り返ってみたい。2023/08/04
Tomoichi
23
日露戦争に比べると関係図書も少なく影の薄い日清戦争を通史・メディア・社会・地域との関連など多方面から読み解く。旅順虐殺事件についても取り上げているがきっかけとなった清国兵による戦死遺体損壊や民間人に扮する行為など記す。人数についても冷静に分析している。陸奥宗光批判や日本政府や軍のドタバタ、日露戦争の遠因、朝鮮との関係など教えられることの多かった一冊でした。2018/10/03
coolflat
20
日清戦争は、①朝鮮との戦争(日朝戦争)、②清との戦争(日清戦争)、そして下関条約後の台湾領有における、台湾の漢族系住民(台湾民主国)との戦争(台湾征服戦争)という、3つの戦争相手国・戦争相手地域の異なった戦争の複合戦争である。一般的には、狭義の②を指すが、本書を読むと、この②の日清戦争は、実態的には日本軍vs清軍の戦争というよりは、日本軍vs李鴻章の私的軍隊の戦争であることがわかる。実は清軍敗退の原因はここにある。政治的にも、軍部的にも統一的仕組みがなかった。李鴻章の孤軍奮闘に頼るようでは勝ち目がない。2020/08/01
May
10
よい本に出合った。最新の研究成果をベースにした日清戦争各般(経済分野なし)にわたる通史。戦闘経過が詳しいのも良い。開戦する考えが明確にはなかった政府が、民党やらマスコミに押されて開戦せざるを得なかったという分析には驚く。情報入手手段が限られた時代、政党やマスコミが世論を創るという面が強く出たのではないか。一方で、そのような方向に国民が向かってしまったのには、社会全体としての何かしら理由があるに違いない。と思いたい。川上操六はわかるが、陸奥宗光も、自身の失政を糊塗するために開戦を主導したとの指摘も興味深い。2022/09/19
ポルターガイスト
9
硬いが安定感があってよかった。やはり日露戦争に比べて存在感が薄く未知の事柄が多かったので,いい勉強になりました。個人メモ:単純な兵器の質では清が優っていた,開戦理由は希薄だったが民党やマスコミの圧力により開戦せざるを得なくなった,戦争終結の時期は下関ではなく台湾・朝鮮に求めるべきかもしれない,中国の弱体化や閔妃暗殺事件を受けて日清戦争後はむしろロシアの南下圧力が強まったとも言える。つまり日清戦争は中国の朝鮮への影響力を排除したがロシアの圧力を強めた点で失敗,事前の外交調整なく対決したため三国干渉を招いた2021/05/15