内容説明
昭和一桁生まれの作家が、自らの日常を通して“現代の老いの姿”を探る。同級生の葬儀を同窓会になぞらえ、男女の老い方の違いに思いを馳せ、「オジイチャン」と呼ばれて動揺、平均余命の数字が気にかかり―。冷静な観察眼と深い内省から紡がれる、珠玉のエッセイ五六篇を収録。
目次
1 病気待ちの列(父という時計;自然に老いていくには? ほか)
2 友を送る―これも同窓会(時間ないのは僕なのに;追い抜き、追い抜かれ ほか)
3 老い遅れに気をつけて(歳を取れなくなった時代;一つ拾い、一つこぼす ほか)
4 「普通高齢者」がイチバン(平均余命で数字遊び;生命の灯が点るのも病院 ほか)
5 “冷や水”とのつきあい方(二度こぼしても―失敗を恐れずに;ヒガミとアキラメ ほか)
著者等紹介
黒井千次[クロイセンジ]
1932年(昭和7年)東京生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、富士重工業に入社。70年より文筆生活に入る。69年『時間』で芸術選奨新人賞、84年『群棲』で第20回谷崎潤一郎賞、94年『カーテンコール』で第46回読売文学賞(小説部門)、2001年『羽根と翼』で第42回毎日芸術賞、2006年『一日 夢の柵』で第59回野間文芸賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
95
孫が生まれて「おじいちゃん!」と呼ばれるようになっても、63歳の当時では、その実感はなかった。偶然の一致だが、コロナ禍と80歳を迎えた昨年あたりから「老い」を意識するようになった。さて、小説しか読んだことがない氏の本作は、10年余も書棚で眠らせていました。読みはじめたら意外に面白いです。いたるところで「オレも同じだよ」と合点が行きます。氏の説によると、どうも年齢相応に老いていくのは困難な時代のようです…。8歳先輩の黒井氏を見習って、運動不足だけには陥らぬよう頑張りたいと思います。2022/05/18
涼
55
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2024/07/post-2b1d4e.html 老いを自覚するさまざまな場面や気持ちが、さりげなく、しかしかなり切実に書かれています。 シリーズなので、順に読んでいきましょう。2024/07/16
クリママ
52
読売新聞夕刊に連載された筆者70代半ばのエッセイをまとめたもの。テーマは「現代における老い」。自分自身のこと、見かける同年代の人のこと。まだ70前の当方にももう思い当たることが多いが、そう悲観的にならずに読めるのは淡々と書かれた文章によるものか。「年寄りゆえの忙しさ」では、病院に行くとき配偶者が付き添っていくが、それは2人分の時間が奪われる次第、とあった。それはきっと筆者がまだ現役であるからの思い。もう自分を縛る時間が無くなれば(病院はできれば避けたいけれど)2人で出かける時間を与えられたと考えたいな。2022/06/18
おか
49
後ろからどんと押されてばたんと倒れるようにしてなった70代、起き上がってみたら60代とはちょっと違う風景になっていた。先ずそこここが痛む、まあ我慢できない痛みではないが、それでもそこに老いを感じないわけにはいかない。黒井さんのほかの作品は読んだことがないが、一度で親しみを感じる。同じ痛みを分け合う同士のような感じ(笑)若者を非難するでもなく、うらやむわけでもなく、老人の立場を強く主張するわけでもない、淡々とした表現が好きです。さあ次の時代を覗いてみようかしらね2022/09/11
GAKU
46
著者が70歳前半の頃から、新聞に連載されていたエッセイをまとめた1冊。自分も70代になったら、日々このような事を感じるのかな。色々と参考になりました。2022/12/21
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