内容説明
「歴史にイフはない」なんて誰が言ったのか―幕府の命運を決した慶応四年(一八六八)一月三日から六日にかけての四日間の戦いは、さまざまな偶然に満ちている。なぜ幕府歩兵隊の銃は装弾していなかったか、吹きつける北風は幕府軍にどう影響したのか、そして慶喜の判断はなぜ揺れ動いたのか―。誰もがその名を知っているけれど、詳しくは知らないこの戦いをドキュメンタリータッチでたどる。
目次
プロローグ 鳥羽伏見の墓碑銘
第1章 開戦前夜
第2章 伝習歩兵隊とシャスポー銃
第3章 鳥羽街道の開戦―戦闘第一日目一月三日
第4章 俵陣地と酒樽陣地―戦闘第二日目一月四日
第5章 千両松の激戦―戦闘第三日目一月五日
第6章 藤堂家の裏切り―戦闘第四日目一月六日
第7章 徳川慶喜逃亡
エピローグ 江戸の落日
著者等紹介
野口武彦[ノグチタケヒコ]
1937年(昭和12年)東京に生まれる。1962年、早稲田大学文学部卒業。その後、東京大学文学部に転じ、同大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を経て、文芸評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
110
この戦争でもし勝ったとしても幕府は崩壊していく運命にあったんだなと思う。あと今は市街地の京阪沿線も激戦地だったと思うと面白い。2012/05/31
としちゃん
47
鳥羽伏見の戦いって、関ヶ原と並ぶくらい、重要な天下分け目の戦いなのに、錦の御旗や、徳川慶喜が戦をほっぽり出して江戸に帰ったことばかりが印象に残り、それで旧幕府軍が敗北したかのような印象になっています。でも、この本を読んでみると、旧幕府軍の戦略のまずさや、薩摩藩の頭の良さがわかるとともに、世の中がひっくり返る時は、人の力を超えた大きな力が動いているのを感じます。鳥羽伏見の戦いは、敗者の旧幕府軍から学ぶことが多いです。2018/01/29
yamahiko
25
歴史の重要な結節点を丹念に読み解いた一冊でした。個人的には、以前から気になっていた慶喜が江戸に戻った本当の理由の一端が明らかになり、満足です。2018/08/13
森林・米・畑
18
問われる徳川慶喜の判断力、決断力。組織のモチベーションの差が明暗を分けた鳥羽伏見。いくら人数で圧倒してても、総大将が弱気では勝てない。考え方、目標が明確で向かう方向が一本化されていて自信と勢いがあれば、錦の御旗が出ても『正義は我らにあり!』と一蹴してしまうことも出来たはずだ。天子様を敵に回すのではなく、天子様を騙し担ぎ立てる奴等を敵とするのだとね。2011/03/23
鐵太郎
17
プロローグより:いつの頃からか、「歴史にイフはない」というたわごとがまかり通っている。世にはしたり顔でそういう人々が多いが、この言葉はどこの誰が言いだしたのか出所不明なのである。ヘロドトスもギボンもミシュレもそんなことは言っていない。おそらく通俗版経済決定論にもとづく<歴史的必然>論の裏返しとして発生した俗説である。…歴史は大小の決断の連続であり、無数のイフの群れが相互排除的にひしめき、最後にその一つが他のすべてを押しのけて場所をしめる瞬間瞬間の持続である。/歴史はイフの連続で成り立っている。 ─至言なり2010/03/30