出版社内容情報
小説をより深く理解し楽しむためには、徒手空拳では心許ない。『フランケンシュタイン』を素材に小説の技巧と最新の批評理論を丁寧に紹介する。
内容説明
批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。
目次
1 小説技法篇(冒頭;ストーリーとプロット;語り手;焦点化 ほか)
2 批評理論篇(伝統的批評;ジャンル批評;読者反応批評;脱構築批評 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
101
この先生の「小説読解入門」を先に読んでいて新書にしては内容がかなり詰まっている感じがしたので、こちらも読むことにしました。読解入門の方はジョージ・エリオットの「ミドルマーチ」についての講義ですがこの本では「フランケンシュタイン」をかなりきめ細かく分析しておられます。大学の授業のような感じで知的好奇心を満たしてくれました。原作を読んでみようという気にさせてくれました。2024/08/12
アキ
97
「フランケンシュタインーあるいは現代のプロメテウス」を題材に様々な方法論で読み、小説とは何かという問題を追求する。1小説技法篇、2批評理論篇から成る。前者では冒頭、ストーリーとプロット、語り手、焦点化、提示と叙述、時間、性格描写、アイロニー、声、イメジャリー、反復、異化、間テクスト性、メタフィクション、結末。後者で伝統的批評、ジャンル批評、読者反応批評、脱構築批評、精神分析批評、フェミニズム批評、ジェンダー批評、マルクス主義批評、文化批評、ポストコロニアル批評、新歴史主義、文体論批評、透明な批評で終える。2022/03/10
shikashika555
58
今までは読み散らしてたり読み過ごしていたことがハッキリと認識できるようになるための、思考の補助線をたくさん提示してくれている。 小説を構成する技法についての説明では 今まで「なんとなく」で理解していたような用語について 明確な定義と説明がなされており、これを頭に入れたら他の批評を読む上での共通言語が得られた感がする。 後半の批評理論では、様々な軸に沿っての批評の形が説明されている。 『ゲイ批評』なんて初めて目にした言葉だ! 他にもこんな批評の形があるのかと驚くやら感心するやら。 とても勉強になりました。2021/09/29
ハミング♪♪@LIVE ON LIVE
57
大変濃い内容で、小説における読み方と『フランケンシュタイン』における、あらゆる解釈がわかりやすく提示されており、非常に興味深かった。内容自体は、「なるほど」と思える部分と「はて、それはどうだろうか?」と思える部分と両方あった。しかし、「『フランケンシュタイン』ほど多様な解釈ができる小説はないのではないか?」と思ったのは確かである。その内容に、いかなる真意を見出すかというのは、本人次第であると思い知らされた。考えれば考えるほど、カオスに陥る。しかし、そこから自分の答えを見つける。それが大切だと感じた。2012/12/20
アナーキー靴下
56
門外漢にとっては入門というより副題が全て。『フランケンシュタイン』の解説を批評方法ごとに分類した好実例といったところだろうか。「Ⅰ 小説技法篇」の大半や「文体論的批評」などは、厳然たる事実と論理立てた説明が多く、発見と学びの宝庫であった。一方で「Ⅱ 批評理論篇」は諸説を駆け足で列挙していくような内容なうえ、講義というものの性質上か読者に対する対話的アプローチもないため、着眼点のヒント、知識を深めるための入口に留まる。批評理論をこれから学ぼうという人のための概説付きインデックスという意味での入門だと思う。2024/07/13