内容説明
裕福な貴婦人ポーシャへの恋に悩む友人のため、貿易商アントニオはユダヤ人高利貸しのシャイロックから借金をしてしまう。担保は自身の肉1ポンド。商船が難破し全財産を失ったアントニオに、シャイロックはあくまでも証文どおりでの返済を迫るのだが…。
著者等紹介
シェイクスピア,ウィリアム[シェイクスピア,ウィリアム][Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家、詩人。若くして故郷を出、ロンドンで役者となった後、座付作者として活躍。『ハムレット』『オセロウ』『リア王』『マクベス』の四大悲劇など、37編の劇を残し、エリザベス時代を代表するばかりか、時代と国境を超えて、世界文学史上最大の作家の一人に数えられている
安西徹雄[アンザイテツオ]
1933年生まれ。上智大学名誉教授。また、「演劇集団“円”」を拠点に、シェイクスピアをはじめ、多くの芝居の翻訳・上演にたずさわってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
140
ヴェニスの商人の舞台は観に行った事はないけれど頭の中で各俳優が演劇をしているイメージで読むことがができました。私にとっては読書というより演劇を観賞した、に近しい感じです。シェイクスピア32歳1596年上演。当時の時代背景や宗教観、ユダヤ人とキリスト教徒の確執。現代の私たちとは善悪の規定が違い同意できない部分は当然あります。しかも演劇なので聴衆を楽しませる必要がある。その意味においては私も楽しませてもらいました。…でもやっぱりこれは演劇を観に行った方が絶対いい!シャイロックのセリフが生で聴きたいっ。ですね。2023/06/15
アキ
93
中田敦彦のyou tube大学で視聴してから読了。ユダヤ人の高利貸しシャイロックを強欲な悪人とみなし、アントニオとその友人バサーニオ、ベルモントの貴婦人ポーシャと侍女ネリッサのキリスト教徒の正義が最後に証明されるハッピーエンドの物語。現代から見ると奴隷の問題やユダヤ人への差別など、倫理的にどうなのかと物言いが付くのかもしれません。これは、劇の台本なので、演じてるのを聞いたら印象がまた変わるのでしょう。言葉の装飾が華美で、ギリシャ神話の喩えが多く使われている。道化のランスロットが真実を見抜いている。2023/12/31
molysk
61
ヴェニスの誠実なる商人アントニオは、麗人ポーシャに恋焦がれる親友バサーニオのため、ユダヤ教徒の金貸しシャイロックから借金をする。海難で資産を失ったアントニオに、シャイロックは証文通りに1ポンドの人肉を求める。バサーニオと結ばれたポーシャは、夫の恩人のために法律学者を装い、人肉の切り取りに血を流すことを禁じて、シャイロックの財産を没収する。当時のキリスト教徒からユダヤ教徒への偏見による勧善懲悪、とも見えるが、シャイロックの科白から掘り下げられる内面には、抑圧される人々へのシェイクスピアの洞察の深さが伺える。2021/02/27
kazi
46
シェイクスピアの喜劇の中でも超有名な作品ですね。お話としてはなかなか面白い。なんだけど、現代の価値観で読むとどうしても許容しがたい点が一つ。この作品はいくら何でもユダヤ人に対するステレオタイプ的偏見がすぎるよ(^^; いったいユダヤ人の金貸しシャイロックが何をしたっていうのよ・・。借金の証文によって、アントニオを殺そうとしたのはそうだけどさあ・・。若い法学者に扮したポーシャが法廷で滅茶苦茶な判決を下すシーンとか読んでてすごく辛かった(^^; 2021/08/28
r.ramone
42
唯一大団円の外側に置かれた悪役シャイロック。しかし、どう読んでも彼への同情を禁じ得ないように描かれている。特に「異教徒」から見たらそうかも。これがルネッサンスだなと思う。面白かった。2020/08/17