内容説明
二十世紀最後の四半世紀、アメリカはベトナム戦争の亡霊と壮絶な戦いを繰り広げた。ベトナムで得られず、その後も手に入れられなかった完璧な勝利、疑念の余地なき正義、そして英雄が存在する戦争を求めて、巨象はもがき続けた。サイゴン陥落後、アメリカの外交・軍事・社会はどのような変化を被ってきたのか。世紀を超えてアメリカを蝕み続けたベトナム症候群が、タリバン戦争、イラク戦争の背景にあることを明かす。
目次
第1章 建国二〇〇年目の敗戦
第2章 癒しを求める旅
第3章 砂上の蜃気楼
第4章 復活途上の超大国
第5章 窮屈な対外介入
第6章 アメリカ式戦争への回帰
終章 アフガニスタンとイラクを超えて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
25
なんとも読み辛く、要点の分かりづらい作品。アメリカ社会と政治でベトナム戦争は国と国民を変えてしまったと捉えた作品。2018/06/08
白義
7
アメリカのマニフェスト・デスティニーに大きな疑問符を叩きつけ、その社会に根深いトラウマを与えたベトナム戦争。本書はアメリカが陥った挫折、ベトナム戦争の亡霊という観点からその後イラク戦争までのアメリカ社会を多面的に振り返るよくできたアメリカ論。ベトナム戦争の幻滅と疲弊、そしてその反動から正義の勝利への欲望にアメリカ社会がいかに深層のレベルで振り回されているのかが特に軍事、外交戦略のハードな側面から理解できた。ベトナム帰還兵は一般人より平均年収と失業率がいいという意外なデータにも言及されている2012/11/20
たけふじ
5
アメリカにとっての戦争、すなわち「勝利して、アメリカに利益をもたらすもの」「正義に立つもの」「英雄がいるもの」「明確な敵がいるもの」という4原則(p62)が崩れたのがベトナム戦争。以降アメリカが軍事介入をする際は、表面上だけでも「正義」や「英雄」、「敵」を演出するようになった。ただし、それが本当の正義であると信じているのは飽きっぽいアメリカ国民だけ。国連という錦の御旗を掲げて介入してもアメリカが主導権を握るという実態は他国から横暴と捉えられ、ユニラテラリズムと批判される。結局アメリカは何も変わっていない。2018/08/13
silka
1
ベトナム戦争時のアメリカメディアは反戦的で好戦派は苦々しく思っていたとある。その後の各種紛争では生中継までなされるようになったにも関わらず、アメリカの英雄的な勝利を演出するようメディアが誘導されたとあるが、当著が書かれた当時はイラク戦争も終わったばかりでメディアの大変革直前だ。その後のスマフォ時代を経てメディアはどうアメリカンの戦争を伝えているのか、続きが読みたい2020/04/29
メコノプシスホリデュラ
1
泥沼化したベトナム戦争の後遺症として政府側も世論も軍事介入の前提にいくつかの条件を意識するようになった。たとえば死活的利益の存在、明確な目標、民主主義短期終了の見込み、地上戦回避など。その経緯等々が様々な切り口から分析されるのだが、論点によって史実を何度も行きつ戻りつするし、結論が反転したりするので読みにくい。世論調査なども表は提示されずに数字だけ文中に引用されるので何年のどの調査なのか混乱した。個人的に興味があるベトナム戦争の最中の50~60年代の辺は気合を入れて読んだのでよく分かったし、細部は面白い。2014/05/25