内容説明
とるに足りない些末な問題と見られがちな選挙制度だが、政治全般に及ぼす影響力は決して小さくない。「選挙制度が適切なら何もかもうまくいく」という哲学者オルテガの言をまつまでもなく、選挙は民主主義をいかなる形態にも変えうる力を秘めている。小選挙区制や比例代表制の思想的バックボーンをわかりやすく紹介し、「選挙制度のデパート」と揶揄される無原則な日本の現行システムを改善するための道筋を示す。
目次
第1章 日本的「選挙制度論」の虚妄―こんな議論では改革はできない
第2章 民主主義思想と選挙制度の類型―各選挙制度はどんな理念にもとづくのか
第3章 選挙制度の細目とその作用―細かな違いがときには結果を大きく変える
第4章 政治制度と選挙制度―選挙制度を変えるだけでいいのか
第5章 選挙制度の作用―選挙制度を変えれば政治は変わるのか
第6章 選挙制度改革の視点―どう議論し、どう改革すればいいのか
終章 理念なき選挙制度を排せよ
著者等紹介
加藤秀治郎[カトウシュウジロウ]
1949年(昭和24年)、岩手県に生まれる。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。同大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。その間、ドイツのボーフム大学およびケルン大学に留学。京都産業大学講師、同助教授、同教授を経て、現在、東洋大学法学部教授。専攻、政治学、比較政治学
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感想・レビュー
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那由田 忠
20
2006年に読んで再読。選挙制度と議会や政党など、様々な政治のあり方が複雑に関連していると実感した。現行制度で民主党の政権交替という成果があったが、無残な失敗に終わり困難な状況に陥った。考え直す必要があるのか。多数代表制(小選挙区制)と比例代表の二種しかないのに、日本の大半の選挙で複数投票としないから、世界唯一の妙な状態である。そのことを皆が知らない。二種の選挙制度が民主政治の二つのあり方・思想と対応しているという第2章が最も重要。これについて、原典を読んでさらに深く理解したいと思った。絶賛推薦!2019/12/21
501
15
選挙が始まるたびに選挙について学ばなければと思い本書を買って数年。いよいよ積読を解消。後半、副題を掘り進めるにしたがいわからない部分が増えてきたものの、思いの外、小選挙区、比例代表の基本から学べる読みやすい本だった。選挙制度が民主主義をどう解釈し、どう政治へ反映していくのか、それを支える制度であることが理解が薄かったので勉強になった。2022/06/25
浅香山三郎
15
選挙制度について議論する際の基本をしつかり教へてくれる本。制度改革に際して、政治家や学者、更には世間がお題目のやうに唱へる言説の誤解を正し、政治システムのサブシステムとしての選挙制度といふ視点から、制度設計をしていくことの大事さを示す。とくに、第5章・第6章を面白く読んだ。政党制及び選挙制度の拘束性の相互関係、参議院の権限の強さ、政治システムの理念を欠いた選挙制度のバラバラさ(衆参両院と地方議会)など、示唆に富む指摘がなされてをり、今後この関連の動きを理解する上での要点を学ぶことができた。2016/10/26
coolflat
15
大阪ダブル選を見るにつけ、首長選に関しては二回投票制を導入すべきではないかと思う。二回投票制は相乗りを防ぐ事に特徴があるが、大阪ダブル選では自民党候補に共産党が支援するというなかなか他では見られない構図が見られた。そこを維新に徹底的につかれ、自民票が維新へ流れた(沖縄ではオール沖縄が正に自民と共産が協力するという構図だったのだが、大阪はそこまで危機意識がないのか?)とも言う。二回投票制であれば、各政党が立候補できる上、選択肢も広がる。自民(うんこ)か維新(うんこ)かみたいなジレンマに苛まれる事もなかった。2015/11/22
coolflat
12
22頁。二大政党制についての二つの誤解。第一の誤解は、二大政党制を二党の議席数の伯仲と混同しているものだ。小選挙区制は小さな得票の差を大きな議席の差とする制度である。人為的に多数派政党を生み出すといわれるように、選挙での勝ち負けがはっきりつくのであり、二党の議席が伯仲することは少ないのだから、議席の差でもって二大政党制か否かを議論するのは間違い。第二の誤解。二大政党制とは、二つの主要政党があって、両者に政権交代の現実的可能性があることをいうが、毎回、接戦とはならず、ある程度の期間内に政権交代があればよい。2017/07/18