内容説明
ナチ党の黎明期、まだ党員になれない少年少女は「ヒトラー・ユーゲント」として認知された。一方ドイツには、帝政時代から独自の「青年運動」の流れがあった。それを受け継ぐ指導者シーラハのもと、「ユーゲント」には、合法的だが暴力的、というナチらしさが隠蔽されていた。健康的で自律性の高い集団として人気を博していた彼らが、ヒトラーによって戦争に利用され、破滅への道を進まされていく運命を克明に辿る。
目次
第1章 青年運動から「ヒトラー・ユーゲント」へ
第2章 シーラハと「ヒトラー・ユーゲント」
第3章 国家ユーゲントへの道
第4章 「ヒトラー・ユーゲント」育成の道
第5章 戦時体制―「ヒトラー・ユーゲント」の崩壊
著者等紹介
平井正[ヒライタダシ]
1929年(昭和4年)、新潟市に生まれる。東京大学文学部独文科卒業、元立教大学教授。著書に『ベルリン』(全3巻・せりか書房)、『都市大衆文化の成立』(共著・有斐閣)、『ゲッベルス』(中公新書)、『レニ・リーフェンシュタール』(晶文社)
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感想・レビュー
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skunk_c
67
ナチスの少年組織として、たびたびいろいろな歴史書に登場するが、その内容を詳らかにしたものとして本書の価値は高い。ドイツの場合ワンダーフォーゲルの伝統があり、第1次世界大戦後の混沌とした時代に、ナチスの青少年部として取り入るようにして作られた組織が、ナチスの体制固めから、最後には不足する兵力充填に使われていく様は、やはり悲しいものだ。指導者はある意味理想も持っていた(自分で考える教育方針とか)が、それを貫徹すれば自己矛盾に気づいただろう。特にゲッベルスがこの組織を「利用」していく様子が恐ろしい。名著と思う。2023/04/07
Book Lover Mr.Garakuta
17
黒歴史だと思った。若い命の力と知恵をもっと他に使えば歴史は変わってたかもと思うと、何となく不憫に思う。 大事な公共の図書館本に書き込みがしてあったのにはいい気持ちにはなれなかった。後で読む人の事を考えろよと思った。2021/08/25
シルク
13
ヒトラーユーゲントと聞けば、「ああ、戦時下ドイツの」と思う。平家物語に出てくる禿っぽい、監視と密告とをメンバーが請け負っていた……みたいなこともうっすらと知っている。けど実はちゃんと知らないよなあ、と思って読んだ本。Hitlerjugend。1936年より、ドイツ国内唯一の青少年団体。日本の場合、かなり団体の統廃合はなされたけど、特定の団体が唯一となるところまではいかなかった……っけ? それを考えると、ヒトラーユーゲントが持ちえたであろう影響力は驚異的であったろうなと思えてくる。10~18歳、加入は義務。2018/06/23
HANA
10
自発的な発生から強制参加させられる運動へ、そして戦争への参加といったユーゲントの辿った流れが詳しく説かれており非常に参考になる。エーデルヴァイス海賊団や白バラ運動への関連も興味深い。特に前者についてはほとんど知らないので関連書籍を読んでみたくなった。参考文献や人名録も充実しており、まさに痒い所へ手が届く作りになっている。強制された形とはいえ戦争前の様々な活動がなんとなく楽しげに移るのは、僕が年を取ったからか、少年期へのノスタルジーなのか。2011/12/07
札幌近現代史研究所(者。自称)
2
「ヒトラー・ユーゲント」の成立から崩壊までを簡潔にしかし要諦を逃さず記述した優れた概説書。少年少女たちにとっては未だ家父長制の根強い家庭や学校から逃れることのできる魅力的な側面があったこと、しかし結局はヒトラーの狙いは、祖国のために戦って死ぬ兵士の錬成にあり、戦争勃発後はそれが露骨に現れながらも優先奮闘するヒトラー・ユーゲントの構成員にはパセティックな感情が押し寄せてやまなかった。2019/11/23