内容説明
「アラビアのロレンス」こと、T・E・ロレンスは、アラブ独立軍を指導した金髪のイギリス人青年として人口に膾炙している。しかし、この英雄像は欧米でつくられたものだ。生身のロレンスはそれよりはるかに複雑で矛盾したものを内包する人物であった。その数奇な生涯はイギリス政府が種をまいた今世紀最大の地域紛争であるアラブ・イスラエル紛争とどのようにかかわったのか。多くの資料をもとに、現地を訪れた筆者が肉薄する。
目次
序章 生誕百年祭
第1章 T.E.ロレンスの青春
第2章 「アラビアのロレンス」誕生す
第3章 イギリスのロレンス
終章 それでもロレンスは招く
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
63
ロレンス生誕110周年の頃の、彼の再評価の流れの中で、アラブ視点からロレンスを再構築しようとした本。著者はジャーナリストでありながら、中東研究でも多くの成果を出している人。「アラビアのロレンス」という「虚像」がいかに作られていったか、また、アラブの当事者たちがロレンスをどう見ていたのかについて、いろいろなエピソードがあって興味深かった。パレスティナ問題の元凶のひとりがロレンスという見立ては、ちょっと彼に対する位置づけが高すぎる気もするが。中公新書『イラク建国』と併読するとなお認識が深まる気がする。2023/02/11
まーくん
49
やはりデービット・リーン監督の映画が自分にとってのロレンスとの出会いかな?ローバート・ペインの本(筑摩書房・中野好夫訳)も若い頃読んでいる。随分と昔の話。歴史的背景なぞ良くわからなかったと思う。本書では卒論のために行ったシリア・パレスチナ徒歩旅行の跡を辿るなどロレンスの若かりし頃にも焦点をあてている。三枚舌外交に翻弄されたという見方もあるが、結局は英国の立場に。アラブの視点を欠いた西洋人による西洋人のための英雄伝説。オックスフォード卒の考古学者で金髪の情報将校。アラブ軍を率いたアカバ攻略。恰好良いけれど。2019/02/19
ジュンジュン
13
中東現代史家による”映画じゃない”ロレンスの実像を描く。「アラビアのロレンス」は祖国と愛したアラブの板挟みに苦悩した悲劇の英雄ではなく、終始祖国の国益の為に戦った「イギリスのロレンス」だった。戦後すぐ欧米で作られたロレンスブームを恥ずかしがりながらも喜ぶ姿にズバリ→「あの男は後ずさりしながらスポットライトを浴びる」(123p)は蓋し名言。2024/04/28
nori
9
I just remember resemble to Himagsikang Pilipino where USA worked as a role of England. In order to study, Spain (Osmanli Imparatorlugu) should be very important. In this sense, author almost ignore study of Turkey like European scholars he criticized.2021/12/28
駒子
3
「アラビアのロレンス」から「イギリスのロレンス」へ。途中から飽きていてしまった。2014/08/28
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- 和書
- 経済原論 有斐閣ブックス